誘惑蜘蛛 book
□誘惑蜘蛛
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仏壇に手を合わせる日課が。
こんなにはやく来るなんて、夢にも思わなかった。
「そろそろ、学校に行こうと思ってるから、安心してね」
仏壇に手を合わせて、話しかける。
返ってこないことに、慣れたわけじゃないけど。
それでも生きてるわたしは、前を向いて進まなきゃいけないんだ。
みんなの荷物を、片付けよう。
捨てることは、できないから。
せめて、見えないところに。
いつか、見ても涙が溢れなくなる日まで。
(今はそんな日が来ることはないような気がするけど、)
「よし、」
立ち上がって、髪を結ぶ。
一人でやらなきゃいけない。
こんなことはきっと、これから山のようにあるんだ。
誘惑蜘蛛