お題:学園萌50のお題(1)

□03、学ラン:ギイ(6月)
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学園萌50のお題(3)  配布元:BLUE100Titles
学ラン

 それは入学して間もない頃のことだった。
 朝食を受け取るために列に並んでいると、その会話はオレの後ろから聞こえてきた。
「なー、託生。託生もネクタイ結ぶのに時間かかってるけど、中学ん時って、制服どんなだったんだ?」
「…別に何だっていいだろ」
 オレは知りたいよ、葉山。
「えー、だって、ネクタイじゃあなかったんだよな。俺よりも苦手そうだしさー」
「…悪かったな。そういう利久は何だったんだよ」
 ぶっきらぼうだが、それでも会話を交わしているという事実に片倉に一方的な嫉妬を感じてしまうのは、致し方ないことなのだが。
「俺? 俺んとこは祠堂と同じブレザーだったけどさ、ネクタイじゃなくて紐タイで蝶々結び、だったんだよなー」
「……蝶々結び…?」
 オレもそうだが、片倉の声が聞こえていた連中は瞬時に想像していたらしい。
 あちこちで吹き出す声が聞こえる。
 それに気付いた片倉が
「なんだよもー。託生のせいで笑われたじゃないか。っていうか、そんなに笑うことないだろ、託生ぃ」
 思わず振り返った先に、体をふたつに折って笑っている葉山がいた。
 あの時の笑顔のように満面の笑顔の葉山が――。



「…で? 結局、託生の中学の制服は何だったんだ?」
 託生のネクタイをきれいに整えてやりながら、昔話を交えつつ訊いてやる。
「…学ランだよ」
「学ラン?」
「そう。向こうにはないのかな。黒の詰襟の学生服」
 だからカラーはつけられるけれど、ネクタイは結び慣れていないのだと、託生が教えてくれる。
「へえ、なるほどね。ほら、できたぞ」
「ありがとう、ギイ」
 今は自分に向けられている託生の笑顔に
「なあ、託生」
「なに? ギイ」
「今度、中学の時の写真、見せてくれよ」
「……いいけど」
 なんだ、今の間は。
「イヤなのか?」
「…イヤなわけじゃないけど、あまりいい写真ってないから」
「それでもいいよ。それが中学の時のおまえなんだからさ」
「…ギイ」
「それからさ、今度写真を撮ろうぜ。祠堂(ここ)の制服着て笑ってるおまえのさ」
「……ギイ」
「オレとツーショットでさ」
 そして、その学ラン姿の隣に貼ろう。
 この姿があるから、この笑顔につながるのだと。
 幸せは現実にあるのだと、過去のおまえに教えてやろう。
 学ラン姿で頑なな頃のおまえに――。
END

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