お題:学園萌50のお題(1)
□14、下駄箱:ギイ(7月)
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学園萌50のお題(14) 配布元:BLUE100Titles
下駄箱
こんな時間に、オレ、いったい何やってるんだろうな。
絶対に誰もいないであろう、夕食時。
オレがいるのは学校の玄関。
しかも、自分の下駄箱の前ではない。
目の前の下駄箱には『葉山』のプレート。
本来、その中にあるべき上履きはオレの手の中。
サイズを確認して、元に戻す。
――なあ、葉山。
いつか……そうだな、ただのクラスメイトから友達になれたら、オレにお前の靴を選ばせてくれよ。似合いそうなの、見つけたんだ。値段はそこそこなのに、見た目はばっちりでさ。履き心地も――
溜息とともに本人には言えない言葉を葉山の上履きに聞かせる。
いつか、が本当に来るのかどうか、今のところ甚だ怪しいけれど。
あきらめることはもうできないんだ。
だから……
いつか、オレが選んだ靴、絶対に履かせてやる。
靴だけじゃない。
全部。上から下まで全部コーディネイトしてやる。
それまで――。
そんなオレのつぶやきを聞いているのは、葉山の上履きだけ…。
――なんてこと、あったんだよな、確か。
「託生、こっちの履いてみろよ。オレはこっちの方が履きやすいと思うぞ」
託生の前に置いてやると
「あ、いいなぁ。……うん、ぴったりだ」
「値段も、予算内だろ?」
「うん、そうだね。じゃあ、これにしようかな」
オレが今いるのは、麓の駅前に新しくできたデパートの靴売り場。
オレの隣には、長年の片想いを乗り越えて、友達・同室者を一気に飛び越えて恋人に昇格させてくれた託生。
一年前、夜の下駄箱で託生の上履きに聞かせた誓いは、今、現実のものになった。
だから…
今夜、託生が眠ったら、あの下駄箱に新たな誓いを立てようか。
これからずっと、おまえの身につけるものはオレが選んでやる、と――。
END