企画
□君に届け!!
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こんな真夜中に、こんな寒い日に誰がこんな人気の無い丘に来るだろうか。そんなのあたしくらいしかいないだろう。
毎年、新年を迎えるのはこの場所で、と決めている。誰にも邪魔されない、あたしだけの秘密の場所。
声を漏らさずに笑うと白い息が流れた。耳を澄ますと除夜の鐘が聞こえた。もうすぐ年が明ける。
ケータイを開いてカウントダウンを始める。
1分前…
新年最初の挨拶は誰にしようか。
30秒前……
そうだ、あいつにしよう。
10秒前………
クスッと笑ってケータイ取り出す。
…5……………
…………4……
……3…………
………………2
………1………
0………………
「明けましておめでとう。」
「『おう、明けまして。』」
電話越しの声と耳から聞こえる声が重なる。後ろを振り向くとケータイを片手に、もう片手はズボンのポケットに突っ込んだ彼が立っていた。
「なななんでここに?!」
「毎年こんなとこに来てやがったのか。」
あたしの質問には答えず、あたしの隣であぐらをかく。
「ねぇってば。」
彼のマフラーを引っ張ると「ぐっ。」とくぐもった声が聞こえた。
「…お前の考えてることなんてお見通しだってぇの。」
鼻先を赤く染めた彼があたしの方を見る。めったに言わないような台詞を吐く彼に胸がときめき、頬が熱くなってくる。
「……そ、だね。」
照れ隠しにへへっと笑って見せる。
「今年の年末もここで新年迎えような。」
「…当たり前。」
END
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