企画
□ケーキ
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「クリス!菓子くれ、菓子。」
勝手に研究所に上がり込み、勝手に冷蔵庫を開け、勝手にゴールドの為に用意しておいたチョコケーキをたいらげたゴールドがクリスに両手を差し出した。
「……。」
無言でゴールドの両手を払い、ゴールドがいる部屋を出る。しかし、その後ろをゴールドがスキップしながらついてくる。
「…ついてこないでよ。あんたにあげるものなんてもうないわ!」
自分でも驚くほど大きな声が出た。重くなった空気に耐えられず、ゴールドに背を向けたまま走って研究所を出た。
「…つれねーな。」
「ただいま。」
玄関からエメラルドの声がした。
「あれ?ゴールド、クリスさんは?」
エメラルドがゴールドが立ちすくんでる部屋をのぞいた。
「クリスなら今出てったぞ。ラルド、なんか菓子ねぇ?」
「そんなのクリスさんに貰えよ。」
「ねぇって言われた。」
「そんな事無いはずだけど…あ”。」
エメラルドが、さっきゴールドが食べていたチョコケーキの残骸を見て固まった。
「これ…食べたの?」
「あぁ、旨かった。」
「これ…クリスさんがゴールドと仕事終わったら一緒に食べるんだって言ってたケーキ。」
エメラルドが少し呆れ口調で言う。
「え…。」
「まさかとは思うけど、1人で食べたの?」
エメラルドが振り向くとそこにもうゴールドの姿は無かった。ふぅ…とため息をつく。
「世話のかかる人達。」
―――…
――…
「はぁ…。」
クリスがずっと使っていた練習場、ここに来ると初心に返れる気がした。
「私って…こんなに弱かったかしら。」
あんなことで苛々してゴールドに八つ当たりするなんて。
ため息混じりの声で呟く。
「んなこたねーぞ。」
ふいに後ろから聞こえた声に驚き振りむく。二っと笑ったゴールドがクリスの隣に座る。
「な、なにし――「はい、これ。」
「えっ。」
そっぽを向いて手に持っていた箱を手渡す。そーっと箱を開けると中からチョコとカボチャで飾り付けられたホールケーキが出てきた。
「…これ……。」
「さっきは、ごめん。」
「ううん、私もごめん。八つ当たりして……でも、ありがと。」
END
おまけ→