main(long・獄ハル)
□第二話
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-第二話-
「いいかっ、動くんじゃねぇ。そっから一歩も動くんじゃねぇぞ」
隼人さん。
煩いです、しつこいです、ウッザいです。
「料理はおれがやる。買い物もおれがやる。風呂掃除も洗濯もおれが・・・・
「・・・・出来ないくせに」
「あ゛ぁ?!」
「いえ、何でも」
-全く、この人どんだけ地獄耳なんですか。
-ていうか、いくらなんでも心配性すぎます。
ハルがいきなり吐き気を催したのが一週間前。
次の日(隼人さんは仕事を休んでわざわざ)、二人で内科へ行くと、異常なし。
おかしいなぁ、と思って京子ちゃんに相談すれば、
『産婦人科は行った?』
と言われた。
まさか、とおもいつつ翌日産婦人科に行くと(この日は流石に隼人さんを仕事へ送り出して一人で)、
『おめでとうございます。双子ですよ』
と衝撃の一言。
いやぁ、驚きましたね。
流石のハルも動揺しすぎて凄いですねぇ、なんて他人事みたいな返答をしてしまいましたよ。
それから家に帰って、なんとなくごちそうを作って、隼人さんを待って。
『ただいま』
『おかえりなさい!ねぇ、隼人さん?』
『なんだよ、にやけた顔しやがって』
『私の吐き気の原因、わかっちゃいました』
『どうだったんだよ?やっぱり風邪か?いや、内科では問題ないって言われたしな・・・・。もしかして内臓とかやられたのか?がんとかじゃねぇよな?』
『・・・・お願いですから落ち着いてください。そして靴べらを振り回さないでください』
『お、おぉ・・・・』
『ハル。ついにお母さんになっちゃいます』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ゛?』
『いやいやいや、すごまないでくださいよ。だーかーらー、ハルと隼人さん、夫婦ってだけじゃなくて、父母としても頑張らなきゃいけなくなったんです』
『・・・・・・・・・・・・それ、って』
『赤ちゃんがいるんです。双子ですって』
『・・・・今日何月何日だ?』
『・・・エイプリルフールじゃないですよ?』
『そ、っか・・・・・・』
『えぇ』
『ハル・・・・』
『何ですか?』
『ありがとう』
『いえいえ』
ってな感じから次の日。
ハルが朝食を作ろうとすれば、ベッドに無理矢理寝かせられ。
買い物行ったことがバレれば、真面目に怒られ。
京子ちゃんと遊びに行こうとすれば、わざわざ仕事場から駆けつけてきて監視され。
挙げ句の果てには、一日中ソファーから動くなと言い出した。
「いいですか?ハルはこれから夕食を作るんです」
今はまさに夕食を作ろうとしたところに獄寺さんが帰ってきたところだった。
最近はハルのことがあるから、極力部下に仕事を回して、自分は早く帰ってきてるらしい。
これは京子ちゃん情報だから確実。
-ごめんなさい、部下のみなさん!!
おかげでハルは日々良心の呵責に苛まれる羽目になっている。
「ダメだ、俺が作る」
きっぱりと言い放つ隼人さん。
これで彼が料理が下手ならまだ言いくるめられるかもしれないが・・・・・。
隼人さんの料理は下手したらハルのよりおいしい(とても悲しいですが事実です)。
そのため、押し問答が続く。
「ハルが作ります。隼人さんは仕事で疲れてるんだから休んでください」
「俺が作るっつってんだろ。別に疲れてねぇから大丈夫だ」
「いえ、疲れてるにきまってます!」
「自分の体のことは自分が一番よくわかってんだよ」
-くっそぉ・・・・。手強いですね・・・・。
こうなったら最終手段。
チュ・・・・
「ね?お願い、隼人さん」
「なっ・・・・・・・・・!!!」
そう。
彼は攻めるのは得意だが、攻められるのは慣れていない。
そこでハルが身に着けた唯一の技。
それは、
<自分からキスをして、上目使い+耳元で囁く>
これ、結構効くんです。
「いーい?」
「あ、あぁ・・・・・」
「ありがとうございます!隼人さん!」
勝った。
未だどっか別の世界に旅立っている隼人さんの横を通り過ぎて、キッチンに向かう。
ハルは料理をしているときが、一番隼人さんの役に立ててるんだなぁって実感するんです。
だから、この仕事だけは絶対ぜーったい譲りませんよ?
隼人さん。
-続く-