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□誰よりも優しくて
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『ハルを・・・・、あいつをよろしくお願いします』
彼の最期の言葉だそうだ。
薄暗くて、じめじめして。
そんな部屋に通されて目の前に現れたのは、安らかに眠っている彼の姿だった。
「バカですね・・・・・、獄寺さん」
後ろですすり泣く声が聞こえる。
きっと京子ちゃんだ。
そして、そんな彼女を、ツナさんは優しく抱きしめるのだろう。
何とも微笑ましい、愛にあふれた光景。
「ハルをよろしく?・・・・ハルの彼氏でもないくせに」
自然と笑いがこぼれる。
それは、嬉しいから?
滑稽だから?
それとも・・・・・・、
ハルがバカだから?
「結局、ハルの結婚式には来れなかったですね」
明日。
そう、あと一日たてば、私は獄寺さんではない人の妻となる。
相手は、ボンゴレと協定を結んだマフィアのボス。
彼は笑った。
-よかったじゃねぇか。てめぇみたいなアホ女を嫁にもらうってやつが出てきて。
そういって、笑った。
-ふん、未だ独り身の獄寺さんがそんな偉そうな口きけるんですか?
だから、私も笑った。
-うるせぇよ。
-そうですね、余計なお世話でした。
脳裏にはまだ、あの日の夕焼けが焼き付いて。
離れない。
「敵マフィアの本部に単独で乗り込むなんて・・・・、自殺行為ですよ?」
何で?
「本当に、・・・・ばか」
ハルも、貴方も。
肝心なところで泣けないんだもの。
素直になれなくて。
なのに。
何で今涙がこぼれるの?
誰よりも優しくて
だけど、誰よりも素直じゃなかった。
最期まで。