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□誰も居ない空間に「おやすみ」
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「おやすみなさい、恭弥さん」

暗い闇に溶けていく、自分の声。

ベッドが妙にフカフカだから、自分まで宙に浮いたような感じがする。

『おいで、ハル』

寝る前はいつもハルのことを引き寄せて。

優しく抱きしめながら。

二人で静かに眠っていたのに。

あの時間が一番好きだったのに。

今はもうどこにもないんです。

あの温もりも、あの声も。


「恭弥さん」

『何?』

瞬間、声が聞こえた気がして振り返れば、そこには満面の笑みのハルと呆れたような顔をした恭弥さんが写った写真立てがあった。


この部屋には、ハルの中は、恭弥さんとの思い出でいっぱいなんです。

幸せでした。

とても、とても。


カタンッ・・・・

静かに写真立てを伏せれば、切ない音が響いた。


『僕を忘れて』


貴方が最期に言った言葉。



「おやすみなさい」

それを打ち消すようにまた呟いた。



誰も居ない空間に「おやすみ」


さようなら、なんて。

まだ言えそうにもないんです。

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