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□ようやく泣ける
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「雲雀さんのバカっ!!」

「あっそう。勝手にすれば?」

ただお互いが素直になれなかっただけだった。



事の発端は、雲雀がハルの誕生日を忘れていたこと。

もちろん雲雀のほうには全く悪気はなく。

ハルもハルで、純粋に好きな人に祝ってもらうのを期待していた。

付き合い始めて、最初のハルの誕生日。

それなりにハルの期待は大きかった。

そして、雲雀は大量の資料の整理にイライラしていた。


「雲雀さん、今日何の日かわかります?」

「知らない」

「もっとよく考えてくださいよ〜」

「知らないって」

「・・・・今日はハルの誕生日です!」

「ふ〜ん・・・・」

「へっ・・・・・?おめでとうは??」

「オメデトウ」

「心がこもってないですよ〜・・・・」

「煩い!しつこい!邪魔するなら出て行って」


その一言が引き金だった。

お互いぎゃあぎゃあ言い合えば、ハルは勢いよく部屋を出ていき、雲雀は作業を再開させる。



風紀委員室に訪れるしばらくの静寂。

雲雀自身、書類の整理とハルの泣きそうな顔がごちゃ混ぜになって実際仕事は全然進んでいなかった。

『雲雀さん!ハッピーバースデー!生まれてきてくれてありがとうございます!』

雲雀の誕生日。
まるで自分のことのように喜んでくれたハルの顔が脳裏に浮かぶ。
そして、自分が気に入っている黄色い鳥の人形を作ってくれた。

『誕生日には、そうですね〜・・・・。バラをいっぱい、抱えるほど渡してもらえたら、泣いちゃいます!』

まだ付き合う前。
独り言のようにつぶやいていたハルの言葉も浮かぶ。


小さく舌打ちをした雲雀は、立ち上がって走り出した。


バラなんて自分のキャラじゃない。
似合わないのもわかってる。

だけど、彼女の笑顔が見れれば、それはそれでいいかもしれない。

そんなことを考えながら。

花屋の店長に唖然とされながら。


彼女の家に向かおうとすれば、目的の人物は公園のブランコに座って、懸命に涙をこらえていた。


「生まれてきてくれてありがとう」

静かに近寄って、ハルの目の前までくれば、バラの花束を差し出す雲雀。

一瞬の沈黙に、みるみるうちに彼の頬が赤くなっていく。



「一瞬変質者かと思っちゃいました」


そういいながらも、嬉しそうに笑ったハルは、思いっきり雲雀に抱き着き、雲雀はその頭をやさしくなでた。


「これでようやく泣けます」

「何で?」

「だって、バラの花束貰ったら、うれしくてなくって言ったじゃないですか」

「あれ・・・・わざと言ったの?」

「ふふっ、乙女をナメちゃいけません♪」




ようやく泣ける

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