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□猛毒は蜜の味
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良薬は苦いというけれど。

猛毒はどんな味なんだろうか。






結局流されるままに来てしまったホテルの一室。

浴室からはシャワーの軽快な水音が聞こえてくる。

久しぶりだ、こんなに動揺しているのは。

まさか本当にこんなところまで来てしまうとは思わなかった。

ベッドに腰をかけ、小さくため息をつけば、ふいにシャワーの音が止んだ。

そしてそっと扉を開く音。

もう一度深く息を吐き、扉のほうを見やれば、思わず息をのんだ。


透き通るような肌に真っ白いバスタオル。


「恭弥さん?」

しばらく固まっていたのを不思議に思ったのか、彼女はゆっくりと近づいてくる。


十年前、望んでも手に入らなかったものがあると思うと、触れるのさえも禁じられているかのように感じる。

彼女はそれ位神聖なもののように見えた。


「あの、大丈夫ですか?」


少しかがむようにして、彼女は僕の前で手を横に振った。


「あぁ、うん」

それしか言えずにいると、ハルはくすりと小さく笑った。

あの誘うような笑みで。


ぐいっと腕を引っ張れば簡単に倒れこんでくる。

そのまま仰向けにさせればじっと真っ直ぐに見つめてくる真っ黒な瞳。

なんとなく後ろめたくなり、すぐにそのまま口付けた。


ゆっくりと首に回される腕。

絡める舌が熱い。

全身を包み込むような興奮に、頭がぼぅっとする。


「んっ・・・・・んんっ・・・・」

苦しそうに顔をゆがめた彼女からゆっくりと離れれば、バスタオルは簡単にハルの体から滑り落ちる。

真っ白な肌にところどころつけられた赤い痕。


そこをそっと指先で撫でれば、ハルはくすぐったそうに身をよじった。

痕の上から、上書きするようにまた痕をつければ、彼女は小さく笑う。

そして何も言わずに僕の頭を撫でた。

全てわかっているかのように。


そのまま胸の突起を口に含めば、か細い悲鳴のような声を上げる。

片手を秘部に這わせれば、もうすでに濡れていた。


「早くない?」

無粋とはわかっていながらそう尋ねると彼女は小さく笑った。

「誰だって駄目だと思いながらも気持ちが昂ること、あるじゃないですか」

そういって優しく頬を撫でられたのがきっかけだった。

一気に指を奥へと侵入させると、熱く締め付けられるような圧迫感。

「んぅっ・・・・・」

指でひっかくようにすれば、彼女の体が小さくはねた。

出したり入れたりを繰り返していくうちにどんどん愛液があふれ出してくる。


そろそろ我慢の限界。

「いい?」

小さく尋ねれば、うつろな目で僕を見つめコクリと頷いた。

自身をゆっくりと入れれば、さらなる圧迫感と快感が身を襲う。

「ひぅっ・・・、ぁっ」

助けを求めるような小さな悲鳴を無視し、そのまま動けば、一際大きな喘ぎ声を上げる。

「っ・・・・」

その声に自分がどんどん欲情していくのが分かる。

奥へ。奥へ。

本能のままに突き続ければ、お互いにどんどん上り詰めていく。


「もぅっ・・・・、あっ・・・・」

ぐっと彼女がぼくの首に腕を回して来る。

「ハルっ・・・・」



そしてお互いに果てる瞬間。




「隼人っ、さん・・・・・」



聞こえるか聞こえないかの小さな声。


彼女の頬には一筋の涙が伝っていた。





猛毒は蜜の味

甘い甘いその果実は。

手にすればするほど、お互いに身を滅ぼしていく。

分かっていても。

手を伸ばさずにはいられないんだ。
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