闇黒シリーズ
□06
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帰ってからも、光子郎たちは、もう一人の選ばれし子供と、俺のデジモンを探している。そう言えば、と前置きしてテントモンが話し出す。
「…凛護はん。紋章は持ってないんでっか?」
『紋章?』
首を傾げれば、光子郎が取り出した、ペンダントのようなもの。そこには紫のプレートがはまっている。
『それは持ってない』
俺の返答に光子郎は考えながら頷く。
「そうか…じゃあ、どこにあるんだろう?」
「もしかたら、ヴァンデモンの奴が持ってるんちゃいますやろか」
「そうかもしれない」
光子郎とテントモンはさくさくと話を進めていく。
俺が…光子郎の荷物になっちゃってんのかな。そんな不安を持ったまま、夜が明けて、朝になっていた。
朝早くからお台場では異常事態が発生し、騒ぎが起こり始めていた。
光子郎はパソコンに向かって、キーボードを叩き続けている。
『テントモン…なんか、ごめん』
「凛護はん?」
『俺ともう一人を探して、みんなが困ってるんだろ?』
「そんな…別に誰の所為でもありまへん」
『…テントモン』
何もできないことが、大切な幼馴染の足を引っ張っていることが、そんな俺が渦中にいることが悔しくて、不安でいつの間にか涙が零れた。
テントモンはそっと大きな爪で俺の涙を拭ってくれた。
俺にもデジモンがいるんなら、どうして会えないんだろう…
(あの夢に出てきた、丸いシルエットに蝙蝠の羽を生やした生き物がいるんだとしたら。…どこにいるんだろう、)
光子郎の方も慌てて、パソコンをいじくっている。騒ぎは俺たちの住んでいるマンションにも迫っていた。
慌てた足音がして、光子郎のとーちゃんとかーちゃんが部屋に駆け込んでくる。
「光子郎!凛護くん!早く逃げないと」
光子郎はいつも通りとはいかないけど、冷静に対処している。それでも、逃げなくちゃ、と言う光子郎のかーちゃんのエプロンを掴んだ。
『大丈夫だよ、光子郎のとーちゃん、かーちゃん』
「凛護くんまで…」
『だって、光子郎が大丈夫って言うから、だから大丈夫。俺は、光子郎を信じる、』
まっすぐ目を見て、目で訴える。光子郎なら大丈夫。俺は信じられるからって。すると、光子郎のとーちゃんが優しく頷いてくれた。
「……そうだな、信じよう。凛護くんの言う通り」
光子郎のとーちゃんとかーちゃんはわかってくれたらしく、光子郎が微笑った。ようやくデジタルバリアが張れた光子郎の部屋に敵のデジモンが来たものの、俺たちの姿は見えていなかった。
この隙にと、俺とテントモンが光子郎を呼ぶ。
「光子郎はん!」『光子郎!』
「!?」
テントモンが喋ってしまったので光子郎のかーちゃんは気絶してしまう。このタイミングで、光子郎のパソコンに連絡が届いた。連絡によって、今の状況がわかった。
今、この霧を出しているのは敵のボスデジモンのヴァンデモンで、フジテレビ…つまり、お台場にいるらしい。
「テントモン、凛護、行こう」
『うん』
光子郎は両親にここにいるように言って、パソコンを背負って部屋のドアを開けた。光子郎のかーちゃんの言葉に涙ぐみながらも光子郎は走り出した。
きっと、絶対にここに帰って来る、そう決めて。
俺達はフジテレビに向かった急いだ。
(今の俺には何もできない)
(俺だって、光子郎やみんなを守りたいのに)
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