ファルシャング

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今日はお祭り。
昨日までの一斉捜査は、予告なしで街を閉鎖して行われたから、そのアフターケアだとか。
俺はいつもみたいにニャンペローナの着ぐるみを被った與儀の横に付いて歩く。
もちろん、貳號艇の羊のコスプレで。

(足音…)

ぱっと振り返ると白い髪の男の子。
なんで治安部に追いかけられてるんだろう。
男の子も、治安部の男の人も、ゴーグル掛けた黒い髪の男の人も、みんなニャンペローナを踏んづけて、走って行った。

『…さっきの、どこかで…』

踏んづけられて転がってるニャンペローナが小さな子に囲まれていた。
俺はしゃがんで、着ぐるみを突く。

『なんか怪しいから、俺追いかける』
「うぅ…、え、えぇ!?追いかける!?」
『うん、じゃあ、あとよろしく!』

ガバッと顔を上げたニャンペローナ。
俺が走ろうとすると、女の子に裾を掴まれた。

「羊ちゃん、どこ行くの?」
『正義のお仕事をしに行くんだメェ』
「お仕事…?」
『そうだメェ』
「…頑張って!羊ちゃん!」
『ありがとメェ〜』

女の子にキャンディを渡して、オロオロする與儀を置いて、猛ダッシュした。
追いついた時にはゴーグルの男の人の前に別の誰かがいて、その状況が危険だってことだけは瞬時にわかった。

『危ない!前見てっ!!』

叫んだものの間に合わず、スタンガンを当てられた。

「花礫!!」

白い髪の男の子が叫ぶけど、ゴーグルの男の人は起き上がらない。というか、起き上がれない。

『俺の後ろに下がって!』
「でも、花礫が…!!」
『だから、ちょっと待てっつーの!』

白い髪の男の子を背に庇って、怪しい男たちと向き合う。

「なんだ、このガキ…仮装?」
「お、おい…仮装って言ったら、」
「まさか…ガキだぞ?」
『お子様だからって、甘く見てんなよ、オッチャン』

その瞬間、頭上からキャンディーバーが降ってきた。うわ…なんてことしやがる。舞い降りてきたのは、ニャンペローナ。そして決めポーズ。

「漲る男子の心意気!!ハート高鳴るキラメキ王子!!国家防衛機関「輪」第貳號艇闘員 與儀 参上!」
『同じく、凛護!どっからでも、かかってきやがれ!』

俺と與儀が武器を構えて睨みつけると、男たちはあっという間に逃げていった。

「…あれ?」
『つーかさ、ここ俺の出番じゃねーの?』
「あ、ご、ごめんね」
『別にいいけどさ。あんさぁ、與儀』
「ん?」

與儀がにこっと笑って首を傾ける。

『捜してるのって、この二人だよな?』
「うん、平門サンもう上だって。というわけで、付いてきてもらうよ?」

與儀が二人を軽々抱き上げて、上空の艇目掛けて飛び上がった。俺も與儀を追いかけて、艇に乗り込む。

「おかえりメェ」
「おかえりメェ」
「ただいま」
『ただいま、羊っ』

ぎゅうーと抱き着けば、もう一度「おかえりメェ」と言ってくれた羊。

『あ、ただいまって言って』
「ただいま!」
「…ただいま、」
「声紋登録完了メェ」
「次からただいまって言わないと追撃されるからね〜」

與儀がさらっと言ったことは正直かなり大事なことなんだけどな。
とりあえず俺たちは、平門とツクモちゃんの待つ部屋へと向かった。





臨時ゲスト2名ご来店♡





(平門、知り合いなのか?)
(そういうの先に言ってよ〜)





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