推理小説

□推理小説
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シュン「風が、気持ちいいなぁ」

    そう言うと、シュンは大きく背伸びをした。

    それから、煙草を口にくわえると、火を着けた。

    そして、隣で、青い顔をしている青年にも、煙草の箱を差し出したが、隣の青年は

   嫌いいと、いう風に手をふった。

キョウ「気持ち悪い…」

    いままで、船酔いはおろか、乗り物酔いなど、ここ数年なったことないし。

    なんか悪いものでも食べたか…

    俺は、昨日の朝から順に、食べたものを思い出してみたが、どうにも思い当た

   る節が無い。

シュン「船酔いか?みっともなぁ…」

こいつ!…うっ、気持ち悪い…

    俺はは、一瞬、シュンの方をキッと睨みつけたが、よっぽど気持ち悪いのか、す

   ぐにうつむいてしまった。

アオイ「まぁた、煙草吸ってる。」

    二人が、甲板でくつろいで(?)いると、一人の女の娘が話しかけて来た。

アオイ「いま、どれぐらい来てるのかな?」

シュン「知らねぇよ!」

    三人が今居るのは、船の甲板なのだが、彼らが向かっているのは、飛花島という、小

   さな無人島だ。

    三人は、バイト仲間で、そのお店自体は潰れてしまったのだが、その時のオーナーの

   誘いで、その小さな島に向かっている。

    オーナーからの、連絡では、その島を買い取ったらしく、別荘を建てたので、遊びに

   こないかというものだった。

    もちろん、他の当時のバイト仲間や、社員の人にも、連絡したからということで、軽

   い同窓会のような、感覚で三人は、参加した。

    シュンとキョウは、同じ大学に通っていて、プライベートでもちょくちょく、行動を

   ともにしていたのだが、アオイは、アルバイト専門、いわゆるフリーターで、こうして

   二人と顔を合わすのは、久しぶりだった。

    だから、会ってみて二人の態度が変わっていたら、どうしようという不安もあったの

   だが、全く変わっていなかったので、安心した。

アオイ「別にそんな怒鳴らなくてもいいじゃん、ねぇキョウ!」

    そういって、二人の横に立つと、シュンの横に座り込んでいる、俺の方にふったが、

   気持ち悪くてとても、返事をする気にもなれない。

アオイ「なに、キョウ?船酔い?だらしない。」

    アオイは、思いっきり、見下した様子で、俺の方を一瞥した。

アオイ「あ〜あ、久しぶりの再会だっていうのに、二人とも、全然雰囲気無いんだから!少し

    は可愛くなったね、とかあってもいいんじゃないの?まぁ、あんた達じゃ、期待する

    だけ無駄か…あとどれくらいなんだろう」

    アオイは、二人の横で一人ぶつくさと、喋っていたが、一人は聞いてないふりを決め

   込み、もう一人は、本当に聞いてないといった状態だった。

シュン「そんなに、気になるなら、船長に聞いてきたらいいじゃん?」

アオイ「いやよ、あの船長なんか、目つきがいやらしいし、気持ち悪い。」

    そう言うと、アオイは、心底嫌そうな顔をした。

シュン「誰も、アオイの体なんか見ないって、引っ込むとこ引っ込んでるけど、出るとこも引

   っ込んでるから、突起物の無いからだだけに、視線も滑らかに、スルーしちゃうと思う

   よ。」

アオイ「あぁ、ひどぉい!それってセクハラ!」

    アオイは、シュンの肩を叩こうとしたが、あっさりかわされてしまった。

キョウ「お前ら…うるさい…」

    俺が、心底迷惑そうに、二人に向かってボソッとつぶやいたが、二人には全く聞

   こえて無い様子だった。    

    俺は、これ以上こいつらといると、余計に気持ち悪くなりそうだったので、立ち去る

   ことにした。

アオイ「あっ、キョウ!キャビンに戻るならついでに、船長さんに、いつ着くか聞いておいて

    よ」

    アオイの声が、甲板に響き渡った。

    

キョウ「う…るさ…い」

    俺は、それだけ言うと、口を押さえて、キャビンに駆け込んだ。
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