土屋連載

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「よぉ、あっくん」


口を幅広な白いマスクで覆った南は愛想の欠片も無い声色で彼を呼んだ。


あっくん
確かにこう呼ばれた。もう一度今し方耳を通過した彼の言葉を土屋は思い出すが…間違いない。確かにあっくんと呼ばれた。アンライクな部類に入る男、あろうことか南烈にそう呼ばれたのだ。


「鋭い目してババンバン、…お前の何処があっくんやねん?おっさん」
「お前にだけは呼ばれたないわ、二度と呼ぶな」「あっくーん」
「止めい口裂け女」
「せめて男にしとけ」


我が家自慢のマスクを愚弄されたに癪が触ったのか、だぼついたマスクをひょいと二つ指で捲り上げた南は、五歩ある土屋との距離を一歩にまで縮めた。そして、


「なっ、お前くっさ!ちょ…近寄んなっ!」
「焼き肉ばんざーい」
「おま、死ね!!」
「うわ、あっくん酷い」「やから喋んなっ!」


予想以上に消化中の焼き肉は破壊力を持っているらしい、死ね死ねと罵倒を繰り返しながらも鼻にはしっかりと指ばさみを決める土屋を前に南は再認識した(…なーんか傷付くわ)



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