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旦那、どうしてオイラに傷をつけてくれないの。

アザだらけのデイダラがそう問う。お願いだから教えてとでも言うような目で、そんな考えたこともなかった。
だから何も言えずに視線を落とした。

それが無意識のうちの分からないの答えになっているとも知らずに。


本当につい最近

成長期をむかえたばかりの
歳がふたまわり以上も離れている従兄弟に
しつこいくらい
懐かれてしまったのは
俺自身、子供は苦手だ。
泣けばなんでも許されると思っているし、なにを考えているか思い付くか分からない 綺麗事だらけのあの脳内。

まったく…理解不能だ

「旦那ぁー…遊ぼっ!」

純粋な笑顔で走り抱き着いてきた。
手加減を知らない体当たりは正直、腹に響く。

旦那ぁー…
甘えた猫のような声を出す。これは演技なのだろうか…?

ハァ……
俺はため息を一つ付いた。それをみたデイダラは嬉しそうに微笑んだ。
コイツは知っているのだ
ため息は承諾の証だと。

知りたがりのこいつの遊びは【教えっこ】だ

「ねぇ旦那…教えっこしよ…?」

いつもどうりの少し遠慮がちな声と顔。

その顔に仕方ない、と呟きお題は?と目で問う。

「愛してるってどうして簡単には言わないのかなぁ…うん…?」

こいつは普通の人間には意味深過ぎる事を言う
どこで覚えてきたのだろうか。
だがその答えは簡単だ。

「言い過ぎると意味が薄くなるからだ…」
当たり前だろ。
とでも言うかの様な言い方だ。

デイダラは
「そうなのか!うん!旦那は物知りだな…!」

いつものお決まり言葉を上機嫌で言う。

だが俺の視線と気持ちはデイダラの腕に向いていた。
服の隙間から微かにみえる小さな丸い火傷。
煙草をねじつけた跡。

こいつが虐待を受けていると知ったのもつい最近のこと
背中や腕に沢山のアザや火傷がみられる。
日が経つごとに状況は悪化した。警察に報告しようとしたところ、デイダラが必死に
「止めて!!!」
といつも男は泣かないんだぞ。という口癖からは想像出来ないほど泣きわめいた。

デイダラは本当の笑顔を見せることもなくなった

ただただ今にも壊れそうな笑顔の仮面を被っているだけ………


俺がそんな事を考えているうちにデイダラは
上機嫌のまま家に帰っていった。


その日を境にデイダラは家に来なくなった

あれ程うざがったにも関わらず、
椅子に座りため息をつく。

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