SS置き場

□残された時間
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あと少しで、すべてが終わる。
今は、そんな数時間の中の1秒。


――なんてのは少し言い過ぎかもしれないけど、でもそうなんだよな。


何をすれば『終わり』なのかずっと分からなかったこんな争いも、
きっとガン・ザルディを倒したら全て終わる。
そんな形になった。

ジェナスも仲間も、そう確信している。
アムジャケットを着るのもこれが最後になるはずだと。


今までにない敵を前にして思うように震えを止められなかった身体も、
もうジェナスのコントロール下に戻った。

隣で肩を寄せる彼女のおかげだ。



――シャシャが言ってくれたみたいに、オレは、シャシャに出会えて良かった。
今ここに居てくれてホントに良かったって、思ってるんだ。


だから




「……バトルが終わったら、シャシャはどうするの?」

「シャシャ?なに?」

「学校とか、あと、前にお店で働くとか夢だったって言ってただろ?」

「ウィ。
ンー……でもまだ、きめてない。なぜ?」


「いや、きっとみんなバラバラになってくんだろうなって……。
――はは、なんかバカみたいだよな、まだ無事に終わってもいないのに」

確かな何かがあるのは今だけ。
変わるのは、やっぱり怖い。

こんなバトルを終わらせたい、それも本心だ。

だけど今のこんな関係がかけがえのないものであるのも本当で。
自分に残された時間はどれくらいだろう?


「……ジェーナ。じかんは、へってくもの?」

「え?」

「だいじょうぶ。バトルがおわっても、きっとジェナはなにもなくさない。
ジェナなら、あたらしいものも たくさんみつけられる」


「そうじゃない、そうじゃなくて……!
だってオレはシャシャと――!」


「くすくす……ジェナ、シャシャとおなじ?」

「おな……え、何?」


「あたし バトルがおわったせかいで、ジェナといろんなもの みていきたい。
ジェナはちがう?」


「!そう……思ってる!オレだって!」


「じゃあ、じかん へらない。ふえてくだけ。ちがう?

バトルがおわったら、きっとまたすぐに はな、さく。ちる。
そのつぎも つぎも あたしはジェナといっしょにいる」


「……っ」


アムエネルギーが全て消された世界は暗闇の底にあるのに、それでもまだ光はあった。

いつもどこからか降ってくる作りもののライトがない分、月の灯りはずっとやわらかくて綺麗で、
その下で笑うシャシャが世界でたった1つ残った光みたいで、たまらなくなる。


「……るから」

「?ジェナ、なんて いった?」

「絶対、そんな時間が来るから。全部終わらせて、オレがそれを守る!
だから――約束」

「ずっと いっしょにいる?」

「…………」




――ほんとズルいよな、全部シャシャに言わせてまだオレは……




「ジェナ?」




「……うん。
アムドライバーじゃなくなっても、シャシャがやりたいことを見つけても。

オレは――シャシャと生きてみたい」


「ウィ――やくそく」







朝日が昇るまであと少し。




――明日になったら、なんて思ってると大体、気付いたら『今日』になってるんだよな

残った時間は……なんて考えると、そんなもんだったっけ

……そんなことも忘れてた


だから行ってこようぜ!

来るのかな、なんて夢みたいに言っていた日が、もう来てたんだ
オレ達が、世界を『今日』にする

そのために

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