東方怠惰談〜幻想入り〜

□粕情「送り送られ夢違え」
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〜〜〜紅魔館〜公真の部屋〜〜〜





…………………………





公真
「『……そうして老人となった浦島太郎は鶴になって何処かへ飛んでいき、その後浦島太郎を見た者は居なかったそうな』…………おしまい」



こいし
「めでたし……なのかな?」



公真
「いや……めでたくはないんじゃないか? 浦島太郎も帰る場所を失った訳だし」



俺は今こいしに本を読み聞かせていた。



というのも物干しを終えて部屋に戻って寝っ転がっていたら、いつの間にか部屋の中にこいしが居たんだ。



向こうから話しかけられるまで、俺はこいしの存在にちっとも気付かなかった。



もう少し気配を感じさせてくれてもいいんじゃないかな?



こいし
「あんまり良い終わり方じゃないね、浦島太郎って」



公真
「……たしかに昔話ってだいたいがハッピーエンドなのにな。俺も小さい頃は不思議な話だと思ったよ」



……もしかして俺が幻想郷に居る間に、外の世界では数十年も経っていた……なんてことはないよな?



浦島太郎を読み聞かせているうちに、俺の中にはそんな不安が顔を覗かせていた。



公真
「というかこれで三冊目を読み終えた訳だが……。こいしは何か面白い話はないのか?」



こいし
「面白い話? ん〜……」



公真
「俺が話し続けるのもマンネリするだろ? 俺もたまにはお前の話が聞きたい」



こいし
「あ……そうだ、面白いかどうかはわからないけど……」



公真
「お、ぜひとも話してみてくれ」



こいし
「私ね、今日は里でフラフラ散策してたらこんな話を聞いたの」



今日は俺も里に行ったんだが……すれ違ったのか?



こいし
「なんでも『新しい外来人が来た』とか『旅籠屋に住み着いた』みたいな話だったんだけど……」



……もしや慧音先生が言ってた40代後半の外来人のことかな?

 
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