東方怠惰談〜幻想入り〜
□怠惰「歪みないスキマ」
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……迷った。
友達も見失ってしまった。
……まず、この状況を説明しよう。
俺の名は鵲 公真(かささぎ こうま)。
今は高校の夏休みで、友人に『珍しいカブトムシでも乱獲して一儲けしよう』とそそのかされ、遠くの森まで出向いた。
……しかしいつの間にか迷ってしまい、俺をそそのかした友人も見失ってしまったのだ。
なんというか、誰にも文句が言えないこの状況が虚しい。
だいたいこの森……カブトムシなんて一匹も見つからないぞ、せいぜいカナブンくらいしか見当たらない。
……はぁ、俺この森から無事に出られるのかな……
声
「もし……少年」
公真
「……?」
背後から俺を呼ぶ声がする。
一瞬友人かと思ったが、声が友人のものとは全然違う。
恐る恐る振り返ってみる。
公真
「…………!?」
俺は驚きのあまり、声すら出なかった。
振り返った俺の目の前には、妙な空間の切れ目のようなものから上半身だけを出して、こちらを見ている女性が居たからだ。
謎の女性
「行きたい?」
公真
「ハァ? ど……何処にだ?」
謎の女性
「幻想郷」
公真
「幻想郷……なんだそこは?」
謎の女性
「ここではない何処か。……とても素敵な場所よ」
公真
「……とりあえずこの森から出られるんだな!?」
謎の女性
「幻想郷にも湿った森はあるけどね」
公真
「……? とにかく連れてってくれ!」
謎の女性
「じゃあ、目を閉じてて……」
公真
「あ、あぁ、わかった」
……この時、俺はこの森から出たい一心だったんだ。
だから……まさかあんな世界に連れて行かれるとは思わなかったんだろうなぁ。
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