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【今日はカナリア色】



 それは黄色い鳥だった。
 黄色い羽はふかふかして、太陽の光に当たりきらきら光るように見える。
 まるで、昔の童話にでも出てきそうなほど細かいつくりの鳥籠の中から、ちょこんと大人しくこちらを見ている目。その瞳は真っ黒な硝子玉のように綺麗で、少し見惚れた。


「なぁ。お前ってどこから来たんだ?」


 ひまわりは鳥と同じ色の髪を揺らして首を傾げた。
 見たことのない小さな鳥だったが、インコなら喋ってくれるかと思い、質問を投げかける。


「名前は? 僕はひまわりって言うんだ。太陽って呼んでもいいぜ」


 いくら質問を投げかけても、鳥はただ自分の毛づくろいをするだけだった。
 その様子さえ陽光に当たる事によって美しく見え、ひまわりはふーっと溜息をついた。


「なんか、お前の方が太陽っぽくていいな」


 お日様に染められてやんのと呟いて、鳥籠の前に座り込む。
 軽い原っぱのような場所にぽつんと置いてあった鳥籠。
 周りには人気はなく、誰が何のためにここに置いたのか。それとも捨ててあるのかはひまわりにはわからない。
 ただ、そんなことは我関せずと鳥籠に居続ける鳥を、ひまわりには美しく感じられた。


「連れて…帰ってもいいかな?」
「だーめ」
「うわぁ!」


 ふいに、後ろから掛かった声にひまわりは飛び上がった。
 慌てて振り向こうとするが、がっしりと頭を掴まれ身動きが取れない。


「だ、誰だよ!」
「だーれだ☆」
「いや、ホント誰!?」
「イヤン、ひーくんこわーい」
「絶対知り合いじゃないだろおまえ!」


 じたばたと暴れるひまわりを気にすることなく、何者かは「おー」と鳥を見た。
 いくら抵抗しても体格差かびくともしない。


「え。つーか、俺を知んないのお前」
「知らねーよ! 離せって!」
「あれだよ、『ふらわーず・かんぱにー』の蒲公英だって」
「え? あ、紫陽花と薔薇のところの?」
「マジで知んねーの? うわ、傷つくわソレ」
「あ。なんかごめん。 忘れてるだけかもしんないけど」
「アレだって、パツキンチャンネーの蒲公英」
「よくわからないけど、絶対嘘だろ!」
「ほら、おまえの好きな巨乳美人だぜ☆」
「おもいっきり声男じゃん!」
「なんだよー好きだろ? お前のキャラ設定にもちゃんと書いてあったのに」
「全部嘘じゃんか! そんなこと一回も言ってねー!」
「え。じゃああれ紫陽花の嘘か」
「紫陽花のせいなのかよ!」
「いいじゃん別に。 よくお前と俺ってキャラ被ってるらしいからさ」
「被ってねーよ! 誰だそんなこと言ったの!」
「うさ饅頭さん」
「中の人!?」


 いいから離せよ。
 やだよ。
 と、力尽きたひまわりは大人しくする。
 まぁまぁと蒲公英はひまわりの頭を掴んだまま、肩を軽く叩いた。


「仲良くやろうぜ」
「……頭離さない癖に」
「そうカッカすんなって詩人君」
「詩人?」
「お日様に染められて……」
「いつからいたんだよ!!」


 聞かれたぁと頭を抱えるひまわりに、楽しそうに笑う蒲公英。
 その様子を見ていた鳥は、密かに首をかしげていた。


「いーじゃんお日様色」
「そう?」
「カッコイイカッコイイ」
「……馬鹿にしてんだろ?」
「じゃあ、あれだ。 お前もお日様に染められてんの?」
「……どっちかってゆうと、染める方になりたい」
「ひーくんえっろーい☆」
「なんでだよ!」


 本気で憤慨するひまわりに、悪ぃ悪ぃと謝る蒲公英。
 それよりさと蒲公英は鳥を指差した。


「こいつなんて鳥か知ってる?」
「いや、わかんねーけど」
「カナリアっていうんだってさ」
「カナリア?」
「そ。だからこいつはお日様色じゃなくてカナリア色なんだとさ」
「へー…カナリア色」
「ちゃんと自分の色持ってるんだよな。いいねー」
「自分の色?」
「そ。お前はひまわりの色だろ?」
「じゃあ、あんたはタンポポ色?」
「かな? もう染めたからわかんねーけど」
「え?」


 また話を蒸し返したのかとひまわりは振り返ると、にんまりとした顔と黄色く揺れる髪が見えた。
 あぁそうか、こいつも黄色かったんだと。ひまわりは鮮やかな深緑色の瞳を丸くした。


「それ…染めてんの?」
「いえーす。 イケメンだろ?」
「全然」
「うわっ。ひっでー」
「何で染めたんだ? 太陽になりたかったのか?」
「いや、いくら俺でもそんな恥かしい理由はねーよ」
「……それ遠まわしに僕を馬鹿にしてる?」
「モテたいから染めたんだ」
「もっと恥かしいってそれ」


 相手にするのが疲れたのか、ひまわりはカナリアの首を撫で始める。
 そういえばと今更思い出したようにひまわりは蒲公英に話しかけた。


「なんでこいつ連れて帰っちゃ駄目なんだ?」
「捜索願い出されてた鳥だから。 で、そいつを俺が保護しに来たから」
「あー。そうゆうことか」
「まぁ結局逃がすんだけどな」
「え、逃がすのか?」
「もとは野生でこの辺に居たんだってさ。 金持ちが捕まえたはいいけど懐かないから戻そうとして籠から出してなかったんだとさ」
「なんだよそれ」
「勝手つーか、放置プレイ?」
「ソレは絶対違う」


 言って、ひまわりはまたじっとカナリアを見る。
 視線に気づいたカナリアはひまわりを見ると、不思議そうに首を傾げた。


「なぁ」
「ん?」
「こいつ、やっぱり連れて帰っ」
「駄目」
「え、いいじゃ」
「駄目」


 不満そうになんでだよと聞くひまわりに蒲公英は一つ溜息をつくと、鳥籠からカナリアを取り出した。
 カナリアはしばらく不思議そうにタンポポを見て、腕に飛び移った。


「な?」
「……え、いや。何が?」
「こいつすっげー大人しいんだ」
「わかるけど」
「でも、全然鳴かねーんだぜこいつ。 カナリアなのに」
「? よくわかんないけど、そうゆうもんじゃねぇの?」
「大人しいけど、誰にも懐かないから歌わないんだと」
「懐かない?」
「そ。一匹狼らしいいぜ。鳥なのに」
「でも、僕なら大丈夫かもしんないしさ」
「何その無駄な自信。 意外とすげぇなお前」


 でもだーめと言うタンポポに、ひまわりは眉を寄せた。
 ふーだって飼ってるから平気だよと主張して見せると、蒲公英は黄色の目を細めて笑って見せた。


「人は人、鳥は鳥。だろ?」
「飼われてたのがいきなり野生で生きていけんのかよ」
「だから元が野生なんだってこいつは」
「でも、鷹とかいたら捕まっちゃうだろ?」
「そん時は自然の摂理。 こいつが飼われんの嫌がったなら自然に返してやんねーと」
「けど…」
「おー。なんか粘るなぁ」


 にししと笑うと、蒲公英はひまわりの頭をがしがし撫でてやった。
 その様子をカナリアは見ていたが、バサバサ羽ばたいたかと思うと空に舞い上がった。


「あ」
「あーあ。ひまわりがうるちゃいから」
「僕のせい!?」
「知ってっか? カナリアって別に籠の中の鳥じゃないんだとさ」
「? なにそれ」
「よく言うじゃん例えで。籠の外じゃ生きられないからそう言うらしいぜ。 でも野生のカナリアは逆に籠で飼うとすぐ弱るんだってよ」
「……そっか」


 空を見ると黄色い小鳥がまだ頭上を周っている。
 鳥にとっての自由などわからないが、今飛んでいるカナリアは楽しそうに見え。
 ひまわりはこれがいいんだと、そう思った。











今日はカナリア色のボツった文章が勿体無かったのでのせてみました。

無理矢理ここで終わらせました()
なんか詩的な文が書けないからギャグに行くみたいです。

霧雨さん宅のひまわりくんをお借りしました!


              
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