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【眠る日】



「ハルジオン」
「はい、なんでしょうか?」
「ハルジオンはすぐいなくなるだか?」


 そう言った私に彼は少し驚いたようにして目を開いた。
 そして、すぐに微笑んで「どうでしょうかね」と優しく私の頭を撫でた。


「急に聞かれてもわからないですよ」
「いなくなるっぺ? 前おめえが言ってただ」
「ですっけ?」
「んだ。 おらちゃんと覚えてた。 ほめとけ」
「偉い偉い。姫女苑は記憶力がいいですね」
「話を逸らさないでほしいっぺ」
「え、今の僕が悪いんですか?」
「寿命か。寿命ならなんとかできっぺ?」
「理不尽なことをいいますね」


 彼はやはり優しく微笑んだままわたしの頭を撫でているだけだった。
 困っているのかもしれないし、別になんとも思っていないのかもしれない。


「一人になったら嫌だっぺ」
「おや、寂しいのですか?」
「うんにゃ、こき使えるやつがいなくなんだ」
「次の僕が来てもこき使わないであげてくださいね?」
「次のハルジオンはおめえじゃねぇ。 おらの知ってたおめぇじゃねぇだ」
「そうですね」


 そこで少し、少しだけ彼は嬉しそうにした。


「代わりにはなりませんよね」
「んだ」
「僕もあなたが来たときびっくりしましたよ」
「何で?」
「可愛らしい女の子だったから。前の姫女苑はごつかったので」


 そこで私も笑った。
 彼はまた私の頭を撫でると、立ち上がってドアに向かった。


「それでは行ってきます」
「もうか?」
「えぇ、もうです」
「ちゃんと知ってるじゃねぇか」
「すいません」
「しかたねぇだ。ゆるしてやっぺ」
「ありがとうございます。 では、 次に待った会うときは…」

「だからもう次はねぇ。 おめえは死んで、おらが死んだらまたこき使ってやんだ」


 ふふっと彼は最後に笑って、「次の兄弟をよろしく」と言ってそれで、

 消えた。

 次のハルジオンは家の裏にでも落ちてるかなとか思いながら、彼の座っていた椅子を見る。
 掛けっ放しの上着を見て、またドアに視線を向けた。
 寂しくは、ない。
 それでも声が震えたのは空腹の所為だろう。


「ばいばい、にーちゃん」


 優しい兄への餞の言葉。
 花だったら兄と私だけれども。






ロリ姫女苑と先代ハルジオン。
こいつらの言う兄弟は血縁ははあんまり関係なく、似てるから兄弟っぽくしてるのかもしれません。

どうでもいい話、先代姫女苑はごついオカマ
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