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【イロイロ トモダチ】
「君は私と友達になりたいのかい?」
呼び止められたのか一瞬考えてしまったが、どうやら自分に話しかけていることに気がつきその人の声に振り返った。
前回の僕の言葉で少し考えていた風にしていた薔薇だった(そんなつもりはなかったが、朝顔に喧嘩を売ったと言われるくらいの事を言ってしまったと自覚はしていた)が、しかし。
びしっとどこかで見たことがあるようなポーズを決め込み、尚且つ背景に彼(彼女?)名そのままに薔薇の花を背景に背負った様子を見たら。
さすがに面食らってしまった。
「……」
「おや、今日は何も言ってこないのかい? あぁ、私のこの新しい服に身を包んだ姿を見て言葉を失ってしまったんだね。わかるよ。何、恥かしがることはないさ」
「……いえ、あまりの登場の面白さに服の色など気にも留めていませんでした」
いえ本当に。心の底から。描写すらできなかった。
そういえば、この人はこんな花だったかな思いながら呆けた顔をしてしまった。
「……私が馬鹿かい」
あまりに僕が無反応だったせいか薔薇はつまらなさそうにポーズを取りやめ、髪(鬘?)を掻き揚げていた。
溜息をついている様子を見ると、本人も少し恥かしかったらしい。
それにしても、前回あれほど蒼い色の薔薇について貶されておいて(言ったのは僕だが)今回見事に蒼一色で来たコレは何だろうか?
僕はいつも通り(朝顔曰く”胡散臭い”)笑顔を浮かべると、「襲われに来てくれたんですか?」と聞いた。
「それとも散されに来てくれたんですか? 僕は前に言ったと思うんですがね」
「いや、そういうのは今日はいい」
面倒そうに薔薇は眉を寄せると、美しいだろと言わんばかりに胸を張って、「感想は?」と聞いてきた。
「どうだい?」
「やはり醜いですね」
「そうかい」
不満げに少し考えているようにした薔薇は、いきなり着ていた蒼い上着を脱ぎ捨てた。
鬘のほうは脱ぎたくないのか、少し考えてからそのままにしていた。
「やはり扱いづらいなこの色は」
「扱いづらい?」
「最近やっと紫は着こなせるようになれたんだが、蒼はまだまだだろうね。 君はいけるかな?まぁ、普段と大差なさそうだけれども」
「一体なんの話ですか?」
「服の話だよ」
髪でもいいけれどと、バラは自分の髪を摘んだ。
今の蒼い髪に薔薇の紅い瞳は、どんなに贔屓目で見てもやはり似合ってはいないように思えた。
そうそうと薔薇は突然思い出したように僕の髪を引っ張った。
素直に痛かったので目で訴えると、「訂正しておくよ」と無視された。
「私は赤薔薇ではないよ」
「……はい?」
「かといって蒼薔薇でもないけれどね」
「目は紅いですが?」
「小さいころに沢山泣いたからだよ」
「兎の都市伝説じゃあるまいし」
「それは冗談だが。まぁ、赤ではないってことだよ、おそらく。君は何色がいいと思う?」
「僕に聞かないでください」
聞かれても困りますよと言うと、それもそうかと薔薇は髪から手を放した。
「困るのか」
「困りますねぇ」
「ちなみに君も蒼い私に慣れてもらわないと困るよ」
「……?」
意味がよくわからず訝しげな目でみると、気にも留めてない様に薔薇は僕を指差した。
「私は誰しもが認めるほどの美しさを持っているが、残念ながら極限までとは言いがたい。それではどうすればいいか?
簡単だ、私が努力すればいい。 美しくなる努力といえばどんな服でも美しく着こなせるまでにならなければならない。
もちろん、それには蒼い色も含まれる」
「……それで?」
「鈍いね君も。仮にも私の友人なら、色くらい我慢してくれと言っているんだよ」
しばらく、言われた言葉を反芻していると、「君は馬鹿だね」と言わんばかりに薔薇が溜息をついた。
その様子が可笑しくなって少し噴出してしまった。
「何だいその笑いは」
「僕は蒼い薔薇が美しすぎて醜いと言っていたんですが?」
「なら、更に美しさを磨けばそんなことも言えなくなるだろう?」
「僕は自然な美しさが好きなのですがねぇ」
「自然な美しさはもう完璧だから不用さ」
「凄い自信ですねキミは」
「事実だからさ」
「襲いますよ?」
「なら、全力で逃げよう」
再度噴出した僕に眉を寄せる薔薇。
それは友人と言いますかと聞くと、友人だよと断言された。
今日、僕はこの面白い花と友人になったらしい。
arkさん宅の藤さんをお借りしました!
人様のキャラは難しいです。捏造すいません。
とりあえず薔薇は歯型をつけられる前に逃げられるの、かな?
こんな感じで、お友達になれると嬉しいです!
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