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【少年三名(未満)】



「他に遊ぶ友はおらんのか」


 お前さんはと。
 柏餅を頬張るひまわりにため息をついた。
 5月5日。突然来たかと思えば、大量の柏餅を手土産に人の家に縁側で菓子を食らうこの小童は、最近やたらこの家に出入りしている。
 下手をすれば彼の想い人であるオオイヌノフグリより出入りの数は多い気さえしてくるので、遊び相手がいないのか心配になってくる。
 声を掛けられたひまわりは一瞬ぽかんと此方を見たかと思うと、あぁと思いの他普通に返答をした。


「ふーのおつかいが先かなってさ」
「いや、そうでなくての…」


 御遣いとはこの大量の柏餅の事だろう。
 甘い物好きの己の為にあの娘が用意してくれたかと思うと目頭が熱くなるが、しかし。
 質問の答えになっていない返事に、もう一度ため息が出たくなる。


「一緒に遊ぶ年頃の友達はおるのか、と」
「あー。紫陽花とか?」
「女じゃろうが」


 言って気が付いたが、そういえばこの付近でひまわりと同年代の男子は全くと言って良い程存在していない。
 唯でさえ人間世界に出る事の無いひまわりは、遊び相手も制限されていたのか。
 もうこの年頃は、女子と一緒にいるのも照れくさくなる頃だろうに、と少し気の毒になる。
 そんな視線に気が付いたのか「瓢箪も友達だしな」と軽やかな笑顔を見せてくれるひまわり。全く違う解釈をされたらしい。
 ……と言うより、今のはわしに対するフォローのつもりか?
 個人的には同じ年頃の子供と遊んでいて貰いたいのだが、最近の若者の思考回路が理解出来ない。

 反応に困り湯呑に口を付けると、がらっと玄関の戸が開く音がした。
 そういえば今日来る予定だったかと耳を澄ませると、やけにゆっくりとした足音が近づいて来るのがわかった。


「……あれ? ひまわりくんも居たんっすね」


 眠たげな瞼を擦りながら、ねむの木がのんびりとした口調で言った。
 その顔を見てぴんと思い出す。そういえばねむの木はひまわりと年が近い。
 しばらく驚いたように様子を見ていたひまわりが、明るくねむの木に声を掛けた。


「おっすねむの木!」
「おっすっす。」


 元気そうっすねと気怠げにねむの木は微笑んだ。
 どうやらこの二人、仲は悪くない様子。


「お邪魔だったっすか?」
「いや、丁度いい。二人で喋っておれ」


 立ち上がり酒の在庫を確認する為に倉に向かう。
 今行う必要性はないが、折角同年代の少年二人が集まったのだ。だったらこれを機会に数少ない男友達にでもなってくれれば良いと思った。
 我ながらいい考えと満足に思う。



 暫く経ち戻ると、ねむの木が一人で縁側に座って茶を飲んでいた。
 おやと首を傾げると、まだお遣いが残っていたひまわりは帰ったらしい。
 何だ残念と思いながらも、ねむの木にひまわりと仲を聞いてみると、にこと笑いながら言った。


「そろそろ女じゃないって信じて欲しいっす」


 駄目だったらしい。









花の世界はショタが少ないってゆう話。

5月5日の子供の日用に書きました。
ショタショタして欲しいとか思ってみる。



              
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