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□昼顔くんの受難シリーズ
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【白い花、黒い絶望】



ふわり。風に翻った髪に、振り返る。
先端にわずかに薄紅の入った髪を見れば、苦しいほどの懐かしさに襲われる。
「…………昼顔…?」
呟けば、くるりと振り向く、少年。
「確かに自分は昼顔ですよー?」
間抜けにも聞こえる声は、確かに俺の言葉を肯定する。肯定して……それだけだ。
それは、ずっと、ずっと求めていた存在で、それなのにその相手は、全く別の存在だと、否応も無く思い知らされる。
「…………新しく、ここに来たのかい?」
「あー、そうですね。気がついたらここにいたんですよっ」
明るくて軽い声の相手は、おそらく藤よりも背が高いだろう。
「そうかい。ここは結構良い場所だからねぇ。いろいろ困ったことがあれば、椿の姫さんを探すといい。手伝ってくれるはずだから」
昼顔は……俺の昼顔は、俺よりも背が低く、華奢だった。
「あ、ありがとうございますですっ」
にへ、と気の抜けた笑顔を見送って、ふらりと再び歩きだす。
公園に着き、藤を見つけた途端、気が抜けたのかズルズルと座り込んでしまった。
「朝顔!?」
藤の声を聞きながら、目を閉じる。

……昔に味わった絶望とは全く違う、鈍く、しかし重すぎる絶望が、黒く、タールのように粘つきながら、俺の心の中へと広がっていくように、感じた。





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