短編SS
短編SSです
◆Trump Panda <道化-Joker->
▼[何度、季節を巡っても.]
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
暖かな春、賑やか夏、穏やかな秋、静かな冬。どの季節もアリスに優しく佇んでいて、どの滞在地の人々も優しかったけれど。ジョーカーとカードゲームで勝利することで好きな季節を選べることよりも、次第に彼とゲームをすることの方が楽しみになってしまった。ただこれを恋と呼べるのかは、まだ断定は出来ない。
「ねえアリス、どうだった?楽しんでもらえたかな」
「楽しめなかったなんてつまんねェこと言うなよ、ガキンチョ!」
道化師は、サーカスのテントの中、舞台の上でアリスに問う。“楽しめたか”と。誰もいなくなった客席から舞台に上がるアリスは答える。今回のサーカスで、ジョーカーの用意した演目はとても楽しめたと。
「はぐらかさないでよ」
「はぐらかしてなんか、いないわ」
「サーカスの話じゃねェことぐらい分かってんだろ」
アリスの背後の客席だった場所は、いつの間にか檻の中で銃声が鳴り、そこにはもう一人の自分がいた。何かを撃ったその自分はまるで愛する人を自らの手で殺めたかのように暗い面持ちで、拳銃を握り締めていた。
「どうして…この世界は、楽しかったのに、」
『ごめんなさい、×××』
「…ねえジョーカー、お願いよ…やめて…」
「僕にはどうしようもないよ。あれは君自身なんだから」
困ったような笑みを浮かべながら道化師はするりとアリスを背後から抱き締める。何を撃ったのか、目の前の光景は夢か現か、本当にあったことのようにも思えるし、無かったかのようにも思える。
『ごめんなさい、ごめんなさい…』
「そんなこと、言わないで…ふざけないで…!」
『ふざけてなんか、いないわ』
アリスが答える。そして鉄格子の向こうとこちら、どちらともなく涙が零れ、ジョーカーの腕を、床を濡らしていく。そうしながら嗚咽を噛み締め、目をぎゅっと瞑る。けれどジョーカーはそんなアリスに優しく囁く。
「アリス、よくみてごらん」
『帰らなきゃ、私は、』
『私のせいで』
『でも、それでも』
視界から、耳から、すべての五感によって壊れていく自分の声が、姿が脳内で渦巻く。胸が押し潰されるかのように軋んで痛む。
「…止めなきゃ」
「お前が止める?やめとけ、無理だ」
「そうだよ、アリス。もう受け入れる準備は整った」
ジャラ、と鎖が四肢に巻き付くような感覚がよせて、体調が悪い時のように身体が段々と怠く重たくなっていく。けれどアリスは首を横に振って、ジョーカーの腕の中で身体の向きを変えて向かい合う。
「…檻の中の私も、私だもの」
「アリ、ス」
笑顔のアリスはジョーカーに最後のキスをした。同時に、アリスはアリスに銃口を向けて、アリスは赤に染まって。
□道化師の仮面からは
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
一筋の雫が流れ落ちた
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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◆お借りしました
反転コンタクト様
斜め読み04より
『ふざけるなと泣きかえした』
└http://nanos.jp/contact/
◆斜め読み/04
こ んなふうに死になさい
別 れ の時は察しろよ
誰か が 君を殺すなら
世界で 最 もいらないもの
口づけの 後 に見る白日夢
空っぽの涙 と 消えた笑顔
あなたが神に 願 ったこと
死ぬまで優しい う そをつく
◎ふざけるなと泣き か えした
ルールを無視するな ら 消えろ
◆
...
2012/10/01(Mon) 22:48
◆<夢魔ーNightmare ー>
▼[真実は、この胸に.]
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
悪夢に魘されているらしい彼女の夢の中に入り込めば、俯き膝を抱える姿が目に入った。
刹那、分かったことは彼女の心はもう、崩壊寸前だった。
辛い真実を、現実を忘れさせる為に白兎に手を貸したはずだったのに、ゲームが終盤に近付く程に、罪悪感は薄まらずに彼女を蝕んでいってしまった。
「ご、…なさい、…ごめ…な…い」
「アリス、」
内心を読もうとしても、思考は滅茶苦茶で断片すら読み取ることは困難だった。
それでも何とか出来ないかと、強く彼女を抱き締める。
「――――…ナイ、…メア…?」
その一瞬に全てをかけた。
現実世界の記憶をベールで覆い隠し、薄めさせればきっと。
どんな弊害が及ぶか分からなかったが、夢魔にはそれしか方法は無かった。
「君は此方を選ぶんだ、選ぶべきなんだ」
選んでさえくれれば、彼女を救える。
ほんの少しだって手を伸ばしてくれなければ夢魔には何も手出しは出来ない。
もどかしさばかりが胸に広がる。
「君が笑顔でいてさえくれるのなら、私は、死ぬまで、」
死ぬまで、優しい嘘をつこう。
何も知らないふりをして、覆い隠したものを彼女の目の届かぬ場所に。
彼女の為に、なんて建て前で本当は自分の為なのかもしれない。
こんなに自分が分からなくなる程に必死になったのは初めてだ。
腕の中で、虚空を見つめながら彼女が身じろぎをし、夢魔の背中に力無く手を回した。
「ナ…ト、メア…わたし、は―――――」
□剥き出しの真実に
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
終焉は引き寄せられて
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
BGM:こちら、幸福安心委員会です。
◆お借りしました
反転コンタクト様
斜め読み04より
『死ぬまで優しいうそをつく』
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◆斜め読み/04
こ んなふうに死になさい
別 れ の時は察しろよ
誰か が 君を殺すなら
世界で 最 もいらないもの
口づけの 後 に見る白日夢
空っぽの涙 と 消えた笑顔
あなたが神に 願 ったこと
◎死ぬまで優しい う そをつく
ふざけるなと泣き か えした
ルールを無視するな ら 消えろ
◆
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2012/09/23(Sun) 06:51
◆▼[三月兎と悲哀な追憶。]
※暗/死 要注意
+・+・+
何の為に生きてきたのか、無論帽子屋ファミリーのボスへ恩を返す為、愛するアリスと同じ時間を過ごす為。何の為に戦ってきたのか、無論相対するマフィアから帽子屋ファミリーを守り、同時に愛するアリスを守る為、だった筈なのに。
「…………………ア、リス」
守るべき彼女は今、目を閉じたまま。たった一瞬の出来事だった。敵側から逸れた銃弾が硝子を突き破り、建物に匿われていたアリスの心臓へと当たり、致命傷となった。この世界で唯一、時計ではなく心臓で生きる彼女を治療出来る医師など居らず、彼女が段々と冷たくなっていくのを見ていることしか出来なかった。
「ッ…、…痛かった、よな、ごめんな、…本当に…傍に、居てやれなくて、…」
別の道は無かったのか、助ける方法は無かったのかと。何度悔やんでも、何度自分を責めても、現実は変わらない。答えも見つからない。
「幸せに、してやりたかっ、た」
牢獄で一生を終える筈だった三月兎を救った帽子屋。彼に与えられた二度目の人生はアリスと共に。そう言えば彼女は、自分も同じ気持ちである、とほんの数時間帯前に交わした言葉が蘇る。
『私は元の世界には帰らないわ。だって…エリオットがいないんだもの』
「俺の為に、この世界に…残って、くれたのに」
きっともうこれ以上の悲劇は三月兎には起こり得ないだろう、そしてあたたかな笑みを浮かべる方法すらも忘れてしまうのだろう。三月兎は初めて、愛する人を失う哀しみを噛みしめて。血に塗れた手で、血に染まったアリスに触れて。血の気を失った唇に、最後のキスをした。
(エリオット、お願いだから、そんな悲しい顔をしないで、あのひだまりの様な明るい笑顔を、みせて)
□もう互いの声も気持ちも届かない
+・+・+
Until I die, no,
even after I die,
I'll love you forever.
死ぬまで、いや、
死んだ後だって、
アンタを永遠に愛してる。
BGM:Poisoner/ALI PROJECT
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反転コンタクト様
斜め読み04より
『空っぽの涙と消えた笑顔』
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◆斜め読み/04
こ んなふうに死になさい
別 れ の時は察しろよ
誰か が 君を殺すなら
世界で 最 もいらないもの
口づけの 後 に見る白日夢
◎空っぽの涙 と 消えた笑顔
あなたが神に 願 ったこと
死ぬまで優しい う そをつく
ふざけるなと泣き か えした
ルールを無視するな ら 消えろ
◆
+・+・+
◆‥‥‥◆‥‥‥◆‥‥‥◆
人_人_人_人_人_人_人_人_人
“* Trump Panda *”
▽I love you
more than words can say.
《言葉にならないくらい好き》
【 ●οωο● pass/37564 】
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2012
___
2012/08/16(Thu) 09:54
◆舞踏会で帽子屋と踊る話。
華やかに飾り付けられたハートの城。女王の機嫌が悪くなったら、いつもなら即座に首をはねられるだろうが今日は違う。よっぽどのことを仕出かさない限り、この舞踏会が血に染まることは無いだろう。おそらく。
「アリス、此方においで」
そんなことを考えながら、帽子屋ファミリーというマフィアの集団のボスと目が合ってしまい呼び止められてしまった。
「始まってから暫く経つが、私が贈ったドレスの着心地は如何かな?」
「ドレスなんて着慣れないものだけれど、これはとても気に入ったわ」
「それは光栄だな」
近くにある立食タイプのビュッフェにはボスの右腕とも言える、帽子屋ファミリーのNo.2である三月兎が片っ端から料理を食らっている一方で、彼は周りに牽制しつつ優雅にティーテーブルを陣取っている。一見すると正反対のようなふたりだがよく考えると似た者同士だ。笑みをこらえきれずに小さく噴き出せば、目の前の彼はカップを置いて立ち上がる。
「どうした?私の顔をみて笑うなんて、気になってしょうがない」
「いえ、別に…ドレスを贈った相手より、紅茶の相手で忙しそうね」
「これは失礼。ではお手を」
彼の差し出された手に自分の手を重ねる。革の手袋越しに仄かに体温を感じた瞬間、ぎゅ、と離さないと言わんばかりに彼の大きな手に包まれる。
ステップは分かっているし、腰に手を回されたことなど数えきれない程あるし、こんな間近で見つめ合ったことも無いわけではない。
「…………お嬢さん?」
「何でもないわ」
それなのに頬が熱くなる。丈の長いドレスの下で足が緊張して震える。それを知ってか知らずか、彼は笑いながら更に身体を密着させた。
「なんだ、先程練習していた時より随分ぎこちないじゃないか」
「気のせいよ」
もうすぐ始めの地点へ戻りかけ、一周するという所で、彼は手を取ってするりと会場から抜け出した。どうやら休憩の為に設けられた客室に向かうらしい。手近な部屋へと辿り着けば、浮遊感。俗に言うお姫様抱っこの形で抱きかかえられる。
「っ!ちょっと、ブラッド!」
「やはり、このドレスを贈って正解だったな」
寝台にゆっくりと下ろされたかと思えば、彼は肩口に顔をうずめ抱き締めながら囁いてくる。
「まさか…脱がしやすいから?」
「ご名答」
「や…ッ、…んん…っ」
部屋が暗くて良かった。前に何度もこのような体勢になったことはあったが、自分の滞在地ではないからか、ここまで恥ずかしさや照れくささがこみあがって来るのは初めてだ。きっと今の自分の顔は酷い事になっているだろう。
「…誰かがこんなに愛らしい君を殺してしまう時が来るくらいなら、いっそ私が喰らって永遠に閉じ込めてしまってもいいな」
「嫌よ…閉じ込められる…なんて、」
喰らうという割には優しく触る、そんな彼に噛みつくようなキスを贈って。
「あなたに閉じ込められるくらいなら、私があなたを…────」
眸に宿る消えそうな夕星に夜を点して
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反転コンタクト様
斜め読み04より
『誰かが君を殺すなら』
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◆斜め読み/04
こ んなふうに死になさい
別 れ の時は察しろよ
◎誰か が 君を殺すなら
世界で 最 もいらないもの
口づけの 後 に見る白日夢
空っぽの涙 と 消えた笑顔
あなたが神に 願 ったこと
死ぬまで優しい う そをつく
ふざけるなと泣き か えした
ルールを無視するな ら 消えろ
◆
2012/07/15(Sun) 06:05
◆大事な遊園地が無くなる話。
賑やかなメロディが流れる方向に歩いていけば、華やかな場所が見えてきた。大人も子供も明るい笑顔で入り満足げに出て行く、こんな物騒な世界でも人々に幸せをもたらす素敵な場所。
「入場券、一枚下さい」
「あ、アリス!だから俺がプレゼントした年間パスポートを使えって!」
入り口で入場券を購入しようとすれば、背後から、彼女の姿を即座にみつけたこの遊園地のオーナーが大声で駆け寄ってきた。
「嫌。私は自分の稼いだお金であなたの自慢の遊園地に入りたいの」
「俺は受け取りたくないんだって、…まあ律儀なお前さんのことだ。恋人同士でも、きちんと公私の区別をつけたい気持ちは分からないでもない」
「でしょう?」
腕を組みながら少々不機嫌そうに呟く彼。確かに、好きな相手に自分が出来ることなら何でもしてやりたい、という気持ちは分かるが、どうも彼はあまりにも彼女を甘やかすものだから危機感も覚える。彼女は、彼に尽くそうと必死になる自分が怖かった、尽くすのが日常的になってしまうことが怖かったのだ。
「でも俺は嫌だ。むしろ、もう顔パスで良いよな」
「ゴーランド!」
「実質的にそうじゃないか」
確かに。従業員の人々も、雇い主のもとへ健気に通う彼女とすっかり打ち解けてしまった。そうでなくともただでさえ目立つ侯爵が懇意にしている彼女はかなり印象に残ることだろう。
「…もういいわ、支払いを受け取らないなら帰る」
「っ、ちょ!待てよ!」
「さようなら。別れの時くらい察して頂戴」
「受け取る!受け取るから待ってくれ!」
まるで子供が母親に縋るように、大人の彼は少女の彼女を引き留めようと必死になる。なかなか面白い構図だったからか、通行人は彼らをみて微笑みながら通り過ぎて行く。当の本人達は全く気付かないままだが。
「…あら、そう?」
「本当に頑固だな…」
「何か言った?」
「何でもない!」
彼が百面相していれば…───スッ、と昼間だった時間が夕方へと変わる。
「あ…、そういえば私、急なシフトを頼まれていたんだった。ごめんなさいゴーランド、また来るわ」
「忙しいんだな。あんたの顔が見れただけでも嬉しいぜ、また来てくれよな」
「ええ、もちろん」
「じゃあな!」
彼の声を背中に受け、彼女は歩き出す。すると、ふと辺りが段々と静かになっていく。まだそれ程離れていない遊園地の音楽すら欠片も聞こえない。突然の閉園にしてもおかしい。
「(…怖い。一旦ゴーランドの所に帰ろう)」
くるりと踵を返した瞬間、強い風が少女の正面から吹いた。スカートが揺れ、思わず目を瞑れば周りがパタリと反転する。
「え…」
来た道は、知らない道へと変わっていた。見知らぬ看板が知らない方向を指し示し、辺りは鬱蒼と茂った森になっていた。
「ゴー、ランド」
もと来た道を走って戻る。走って走って走って、遊園地があるはずの場所をみても、そこには何も無い。あまりの奇妙な感覚と、悲しさに目尻に涙が浮かんだ。
後に知ったことは、この不思議の国は誰の意志とも関係無しに土地を動かしたり、他の国に移したり出来るらしい。遊園地は後者だ。この国に閉じ込められ取り残されてしまった彼女が、彼に会う為の手段は、無い。彼女は愛する人を見失い、迷子になってしまった。
別れの時は察することも出来ずに突然に
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斜め読み04より
『別れの時は察しろよ』
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◆斜め読み/04
こ んなふうに死になさい
◎別 れ の時は察しろよ
誰か が 君を殺すなら
世界で 最 もいらないもの
口づけの 後 に見る白日夢
空っぽの涙 と 消えた笑顔
あなたが神に 願 ったこと
死ぬまで優しい う そをつく
ふざけるなと泣き か えした
ルールを無視するな ら 消えろ
◆
2012/07/15(Sun) 00:10
◆もし白兎が×ぬならば、の話。
この可笑しな世界にアリスを引きずり込んだのは、案内役の白兎である彼だった。この世界が夢では無いと彼は言った。けれど彼女が夢であって欲しいと願うのなら、彼は夢の中の存在でも良いから愛して欲しい、と言った。彼女は、そんな彼を好きになり、この世界を愛した。
「…嬉しいんです。あなたがこの世界を好きになってくれて、僕を愛してくれて……
でも、もし僕があなたを想うあまり自分の役を放り出したら、あなたはどうしますか?」
彼が零したそのif[もしも]は実に恐ろしいもので。つまり白兎という名の役をおりるということ。それは、生きる為の何の生き甲斐も見つけられない人々が乗るこのゲームの盤上から解放されるということ。
きっとそうなれば彼は、彼自身固有の何かすら持たず、役無し達と同じように顔がはっきりと判別しにくくなり、個人を断定しにくくなるだろう。それでも彼女は。
「別に…どうもしないと思うけれど」
「元の世界へ帰らないんですか」
「ペーターが役をおりるだけじゃなく、本当に死んでしまうのなら、考えてみてもいいけど、」
彼女の瞳を覗き込みつつ、彼は小さく微笑んで頷いた。彼女と共に暗い穴へと落ちる瞬間によく似た笑みだった。
「そうならば、僕はあなたに殺されたい」
「じゃあ」
手で銃の形を作り、彼の胸元へ疑似の銃口をあてがい彼の真っ赤な瞳ともう一度目を合わせて悪戯を好む子供のように明るく言った。
「死ぬならこんな風に、私に殺されて、ね?」
「そうですね…僕という時間が止まる瞬間を見届けてくれるなら」
そうして胸元に突き付けられた彼女の指先をそっと包んで目を伏せた。
「どうしたの」
「願わくば、永遠に一緒に。生きるならあなたの為に。死ぬならあなたの手で」
彼女を愛して彼が知ったのは、誰かを愛する喜び。想い合う幸せ。そして愛する誰かを失うかもしれない恐怖。
「私はあなたがいたからこの世界に留まったの。そんなに簡単に死んでしまったら、困るわ」
彼女の元居た世界に、一番近いのは白兎。彼が傍に居れば、彼女はきっと元の世界を思い出す。良い思い出も、悪い思い出も。忘れさせるのが最善の方法だと、分かってはいるけれど。
「愛しています、アリス」
彼女から離れるということが
死ぬ程辛いものになってしまったから
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斜め読み04より
『こんなふうに死になさい』
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◆斜め読み/04
◎ こ んなふうに死になさい
別 れ の時は察しろよ
誰か が 君を殺すなら
世界で 最 もいらないもの
口づけの 後 に見る白日夢
空っぽの涙 と 消えた笑顔
あなたが神に 願 ったこと
死ぬまで優しい う そをつく
ふざけるなと泣き か えした
ルールを無視するな ら 消えろ
◆
2012/07/14(Sat) 16:00
◆ロリーナ姉さんは最強だという話。
先生vs.ロリーナ
「僕は、ロリーナさんのことが好きで、」
「え?何かしら、もう一度言って下さる?」
「僕は、ロリーナさんのことが好、」
「は?何を言っているのかしら、あなた今アリスとお付き合いしているんじゃなかったかしら?」
「あの、それは…」
「本当にくだらない男ね。まさかアリスに別れを切り出したの?あの子の愛らしさを理解出来なかったのね、可哀想に」
「え、その、でも」
「でも?あの子を傷つけた上で更に何を申し立てるつもり?いい加減にして頂戴、このロリコン教師」
「…すいません」
「聞こえないわ」
「すいませんでした」
「何に対しての謝罪なのかしら。ああ、あなたがこの世界に生きていることに対して、よね?さあ、これ以上この世界に留まらないで。同じ空気を吸っているかと思うと実に不愉快よ」
「すいませんでした!!orz」
∴ロリーナまじ圧勝
2012/07/01(Sun) 05:55
◆儚く散った両想いと繰り返し一粒な真相END の話。
+・+・+
ずっとずっとこの淡い幸せが続けばいいと、願ったけれど、どんなに後悔したってもう元には戻らない。
─────…アリス、ごめん。やっぱり…僕は君のお姉さんが、
私が口にした好意は、軽いフレーズなんかでは無かったのに、彼のその言葉で見事に打ち砕かれた。
硝子越しの微かな光さえ途絶えてしまった。なら、何故、付き合ってくれたのだろう。彼はいつから姉に想いを寄せていたのだろう。どうして、私なんかと。姉を選ぶのなら最初からそうしてくれた方がずっと良かったのに。
家庭教師の授業の合間に、姉が休憩の為のティーセットとスコーンを持って来た姿を見つめる彼をみて、何となく気付いていた。けれどまだ心の底では信じていた、疑うなんて嫌で、自分が認めてしまえば離れていくような気がして。結局それは無駄だったのだが。ぽっかりと空いたこの穴は二度と埋まらないような気がする。
恐らくはじめから、全部嘘だった、自分と相手の気持ちは近付いてなんか無かった。ずっと想っていた相手への告白が成功したことにひとりで舞い上がって、馬鹿みたい、と自嘲気味に心中で呟けば、込み上げてくるのはどろどろと渦巻いた感情で。
─────…私…自立して家を出たいの。…姉さんと一緒だと…つらい、から
自分が発した言葉の中身なんか本当はどうでもよくて、どうにかして自分の中を整理したくて紡いだそれは、今思えば姉にとってどんなに残酷な言葉だっただろう。
それについて謝る機会すら得ることが出来ないまま、世界で一番大好きで優しい姉は、息を引き取った。
「姉さん、さようなら、愛してる」
壊れた時計を投げ出して、深い深い眠りに落ちて、悪夢の中で描き続けるのは、全てが揃っていた幸せなあの頃。最初で最後の大切な、夢。
(私は一生背負い続ける)
+・+・+
BGM:繰り返し一粒
兄蟻の真相ENDを久しぶりに見た後箱蟻パロのロリーナ姉さんの元気な姿を見て泣きそうになりました。
黒蟻や兄蟻箱蟻では付き合ってなかったみたいなことをいっていたりいなかったり…とりあえず婆蟻漫画版設定より先生はアリスと付き合っていた、としています。
2012/06/30(Sat) 23:31
◆[ブラッドに紅茶をぶちまける話。 ]
+・+・+
「やだよ!ひよこウサギなんか相手にしてる暇無いんだから!」
「そうだそうだ!」
「うるッッせぇ!サボんなツインズ!」
「…今日のスコーン大丈夫かな…って、うわあ!こっち来ないでよ─────っ!」
凄まじい勢いで突進され、ティータイムの準備を進める私が押す給仕台にあったポットの中身は、テーブルで待つ我らがボスへとクリティカルヒットした。こうか は ばつぐん だ !
「うわあああああ!ボスが紅茶まみれに!あっでもボス紅茶好きですよね?三度の飯より紅茶なんですからこれくらいどうってことないですよね?」
「…さてメイド長、他に言い残しておきたい言葉はあるかな?」
「すいませんでした」
実際悪いのはNo.2と門番達なのに、と思って辺りを見回せば全速力で逃げていく三人、おい待て。
「帽子、拭くので脱いで頂けますか?」
「ならば君もそろそろ私の伴侶となる覚悟を持って頂きたい」
「湿ってると少し重たいですねえ、はい拭きました被せておきますね」
「私の話を無視するな」
「白い服なので目立ちますね、まあもともと目立ってなんぼの衣装ですし時間帯が経てば気にならなくなりますよ」
「時間帯が過ぎるまで私の大半は湿ったままでいろというのか?それは嫌だ、着替える」
「お召し替えですか?では向こうの…」
「もちろん、私をこんな姿にした君が手伝ってくれるだろう?」
「それはちょっと…」
「なら解雇しようか?」
「究極の二択ですね、喜んでお手伝いさせて頂きます」
ブラッドのいつもの薔薇の香りと紅茶の香りが、ふわりと混ざり合った。
(何だかんだいって、甘いのです)
+・+・+
クリムゾン読みながら、ボスの
ことを考えたらこうなった(゜Д゜)!
あのブラッドの帽子は普通に
重そうなんだが、きっと水を
吸ったらすごく重たいと思う
2012/06/30(Sat) 22:15
◆[ユリウスに珈琲をぶちまける話。 ]
+・+・+
「ユリウス、
そろそろ一段落…、ッ!!!」
────ガチャンッ!!バシャァア!!
「…………………おい」
「…あーあ」
「“あーあ”じゃない…お前は何がしたいんだ。仕事の邪魔か?そんなに私の邪魔がしたいのか?」
「いやいやそんな滅相も御座いませんよマジで」
勢いよくひっくり返したカップから零れ出た黒い液体は、それを渡そうとした相手に、見事に全てかかってしまった。
「…………………、おい」
「………ごめんなさい。淹れてからしばらく経ってるから、熱くはないと思うんだけど……今拭くもの…」
「要らん…お前は大丈夫か」
「私なんて構わない、ユリウスの方が大事だよ」
「…、時計にはかかっていないようだ」
「いや時計も大事なんだろうけど、個人的にはユリウスの方が…」
「温いな…どうせ本に夢中になって淹れたことも忘れていたんだろう」
「その通りなんだけど!ちょっと、はぐらかさないで!」
「もう一度淹れ直せ。そして私の邪魔にならないように、差し入れしてくれ」
「邪魔をするのはユリウスに休んでほしいからなんだよ」
「もう一度、コーヒーを淹れてくれないか?」
「ああもう、はいはいはい!じゃあ淹れるまで休憩しててね?」
「…わかった」
「次こそは80点台を目指します!」
「精々努力しろ」
「了解!」
────ガチャンッ!!ズザァア!!
それでもユリウスは、私を叱ることはあっても追い出そうとはせず、心配してくれているようだった。
この世界は物騒だけれども
珈琲色のやさしい世界を
彼の中に見つけた
+・+・+
反転コンタクト様より
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『 やさしい世界を
きみの腕の中に
見つけた 』
2012/06/30(Sat) 21:35
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