ForestDrop文庫

□時の鏡2『伝説の戦士』
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3,仲間を助けたい… 二人目の戦士『フェイリ―スターライト』登場
「待ちなさい!!」
 鷹斗がブルースターライトへ変身した後、真琴らに襲いかかってきた人影たちの前へと立ちはだかった。
『ナンダ、オマエハ!?』
「風の戦士、ブルースターライト、ただいま、参上! お前たちの好きにはさせない!!」
『ふっ。それはどうかな??』
 襲ってきた人影が、まだディルブラックの雑魚兵だったこともあり、1人で相手して、数人以上は何とか倒していた。
「ダメだ。きりがない…。」
 倒しても倒しても、次々と敵兵が襲いかかってくるため、なかなか終わりが見えてこない。
『だんだん疲れてきたな…? よし、抑えろ!!』
 ブルースターライトが一瞬だけ油断したのを見逃さず、何人かの敵兵たちが一気に抑えにかかった。
「何をする!?」
『いくら、伝説の戦士に変身しても、さすがに本体は人間ね。』
「…だ、誰だ!?」
『…名乗るだけは名乗っておくか。私は、ディルブラック幹部の一人、ルイラ。総統ルイストールの忠実なる僕だ。』
「なぬっ!?」
『いくら抵抗しても、抑えつけられてれば何もできないか。いい気味だな。』
 うつぶせに抑えられているブルースターライトを見下ろすかのように、ルイラは揚々としている。この地球上で何よりも危険因子として上がっていたのは、能力者であり、特にブルースターライトの存在は、特に怪しまれていたのだ。
『…この辺りにレイナとかがいるかもしれないぞ。探せ!!』
 ルイラの命令を受けて、何人かの兵士たちが一斉に周りを捜索し始めた。

『このままだと、ブルースターライトが…。』
「でも、下手に動いたら…。」
 真琴は鳩が目立たないように抱きかかえた状態で、近くの駐輪場の陰に身を潜めていた。
 その場所から、ブルースターライトが抑えられているのも見えている。何とか助けたいのだが、今のままではどうすることもできない。
『鷹斗さん…。』
「えっ?」
 鳩が急に発したその名前に、真琴は反応した。
「ねえ、ブルースターライトと、鷹斗君て、なにか関係あるの?」
『…言いにくいですが…。ブルースターライトは、鷹斗さんが自身の能力を使って変身した姿なのです。』
「何ですって!?」
『昨日ですね…。ディルブラックの幹部の一人と対峙した際、とっさに力を解放する手段として、私が鷹斗さんに変身する術を教えてしまいました。もし、普通の姿のままであれば、急に相手が狙いをつけることもなかったかもしれません…。』
「…鷹斗君が、何者かと戦っているというのは、私も知ってた。だけど、私にまで危害か及ぶのを恐れて、鷹斗君は、詳しいことをあまり話さなかったの。まさか、こんな事になっていたなんて…。」
『…あなたの友達を、こんな目に遭わせてしまって…。』
「過ぎたことだから仕方ないにしても…。」
 その時、鈍い音が聞こえて、ふと顔を見上げると、ブルースターライトが抑えつけられたまま立ち上がらされ、何人かの兵士に危害をくわえられているのが見えた。
『何とか、助ける手段は…。』
「…出来ないの?」
『えっ?』
「もし、私が鷹斗君と同じ能力を持っていれば…。」
『…もし、真琴さんが、鷹斗さんと同じ宿命を背負う覚悟があるなら、能力を持たせることはできます。』
「…出来るの?」
『でも、もしかしたら今までの生活を捨てなければいけなくなるかもしれません…。それでも、いいのですか?』
「…少しでも、鷹斗君の力になれるなら、それを喜んで受け入れるわ。」
『…分かりました。でも、決して、生命の保証は出来ないということを、先に言っておきます。』
(生命の保証はできない…。) 
 それよりも先に、自分よりも先に戦うことを選んだ彼・鷹斗を助けたい。今の真琴には、それ以外に考えられなかった。
『クロス・フォート!!』
 鳩がそう叫ぶと、真琴の周りが急に違う空間へと変わった。
「ここは、一体なんですか?」
『…クロス・フォートという技でできる、バリアの一種です。周りとは一切、時間なども遮断されています。』
「それで、能力というのは?」
『…詳しいことは後で説明するとして、この剣を手にとってください。』
 何もないバリアの空間に、急に剣が現れた。
 真琴がその剣を手にとると、剣の柄についている赤い宝石みたいなものが光りだした。
『これで、持ち主をあなたと認めたはずです。』
「…これでですか?」
『時間がありません。スターライト・サインアップと叫んでください。』
「すたーらいと・さいんあっぷ?」
『それが、鷹斗さんに教えた変身呪文です。変身を解除する際には、サインアウトというのですが…。』
「分かったわ。」
 真琴は頷くと、ひとつ息をつき、変身呪文を叫んだ。
「スターライト・サインアップ!!」
 その言葉を叫ぶと、剣が赤い光を放ちだすと、真琴自身も赤く光りだし、ブルースターライトと同じような姿へと代わり、その光は剣へと収まっていった。
「…これは?」
『炎と心の戦士、フェイリースターライトです。どうやら、本当に真琴さんも能力者だったみたいですね。』
「そう言われても、自覚が…。」
『普通なら、いらない能力です。自覚がないのも当たり前ですから。』
「そういうものですか…。」
 周りのバリアーが消えると、フェイリースターライトはすかさず、鳩を術を使って髪飾りの姿にして隠すと、敵兵たちの中へと飛び込んで行った。
「待ちなさい!!」
『ん!?』
 ブルースターライトの周りにいた敵兵たちを次々と倒し、ついには抑えつけられていたブルースターライトの解放に成功した。
「…仲間か?」
「えっ?」
 敵兵の中から謎の男が現れて敵を一蹴すると、倒れかかったブルースターライトをとっさに抱きかかえた。
「相当、リンチされたみたいだな…。気を失っている。」
「…大丈夫なんでしょうか。」
「安静にしておけば、すぐに目を覚ますだろう。」
「そうですか…。」
 ブルースターライトを近くにあったベンチへと寝かせると、謎の男は飛びかかってきた別の敵兵士を蹴散らした。
『とんだ邪魔者が入ったな…。』
「よくも、仲間をこてんぱんにしてくれたわね!!」
『…ついに2人目が現れたか。まあいい。ここで成敗してやる!!』
「簡単に成敗なんかされないわ!!」
 変身した途端に何かが吹っ切れたのか、フェイリースターライトこと真琴は、敵幹部のルイラに対して互角に戦いだした。
『こいつ、強い…!!』
 完全に油断していたルイラは、一瞬の隙を突かれてしまった。
 フェイリースターライトの術によって突き飛ばされ、ディルブラックの黒いワゴン車にそのまま全身を打ちつけられてしまった。
『ちっ…。』
 すぐさま車に待機していた別の兵士が、車内にルイラを収容すると、猛スピードでその場を走り去った。
 フェイリースターライトはとっさに、その車を追いかけようとしたものの、すぐに姿を見失ってしまった。
「さすがに、車じゃあ、簡単に逃げられてしまうわね。」
 その車が止まっていた場所へと来てみると、半分に割れたペンダントのようなものが落ちていることに気付いた。
「この模様、何かに似ているような…。」
 とっさにそのペンダントを拾い上げると、ブルースターライトが横になっているベンチへと向かっていった。

「今さっきの連中は?」
「…逃げられてしまいました。」
 ブルースターライトのそばでずっと見守っていた謎の男は、駆け寄ってきたフェイリースターライトに尋ねた。
「仕方ないな。相手は車だし、人では簡単に追いつけないしな。」
「それより、助けていただいて、ありがとうございました。」
「礼は別にいい。それより、鳩を見なかったか?」
「鳩?」
「割れたペンダントを首から提げているんだが…。」
『…多分、それは私の事でしょう。それより、真琴さん。』
 髪飾りに姿を変えていた鳩が元の姿に戻ると、真琴が手に持っていたペンダントの片割れを見ようとした。
「やっぱり、このペンダントは2つに割れてたんだ…。」
 謎の男はその鳩を見るなり、ホッとするかのような顔を見せた。
「…よかった。捕まっていなくて、安心した…。」
『…この人、見たことありますね。でも、ディルブラックらしい雰囲気ではないんですが…。』
「君が持っている、そのペンダントの片割れは!?」
「さっき、やつらの車が止まっていた場所に落ちていました。きっと、さっきのルイラとかいう敵が、所持していたのでしょうか。」
「とにかく、その鳩が首から下げているペンダントに、割れている方を合わせてみて。」
 男に言われるがまま、フェイリースターライトは鳩が提げているペンダントと、さっき拾ってきたペンダントの片割れを合わせた。
「…ピッタリですね。」
 フェイリースターライトが手を離すと、元々から割れていなかったかのように、きれいな形のペンダントに変わっていた。
「…元々、こういう形だったんですか。」
「いつ割れたんだかは、よく分からないがな。」
 元の形に戻ったペンダントが急に光りだすと、それを首から提げていた鳩も光の中に包まれた。
 その光の眩しさに、フェイリースターライトは耐え切れずに目をつぶった。次に目を開けた時には、鳩の姿はそこにはいなく、一人の髪の長い女性が、さっきのペンダントを首から提げ、その場所に立っていたのだ。
「レイナ陛下、ご無事だったのですか。」
 男が急に、その女性をレイナ陛下と呼んだことに、何が何だか分からず、フェイリースターライトは首をかしげた。
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