光ヶ丘鉄道の一日(小説版)

□あおぞら銀河鉄道にて
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2,調べた結果…

 検査終了後、それらの結果をまとめた表を見て、美住Pと絵美Pは唖然とした。やはり見た目以上に現在の状態は悪かった。
「全く…どういう使い方してるのよ、この機関車…。不具合だらけね」
「えっ?そんなにですか!?」
 そのC56も、その検査結果に驚きを隠せていない。自覚していた症状はあっただろうが、そこまで重くは見ていなかったのかもしれない。
「計器やばねの故障だけで、動かなくなるわけない。走行装置に不具合があったのよ。ボイラーに問題がないのは、まだ救いね…」
 蒸気機関車の心臓でもあろうボイラーは、台枠とともに重要な部品だ。どちらかが破損していたら、間違いなく廃車という選択肢を迫られる。
「直せるんですか?」
「時間はかかるけど、直せるわ。部品さえ集まればね」
「そうですか、それはよかったです」
 正直なところ、美住Pと絵美Pには、ちゃんと修理できるかは不安だった。これから必要な部品を調達しなければならないし、修理したところで調子を戻せるか、分からなかったからだ。
「部品集めとか、相当苦労しそうですね…」
「先が思いやられるけどね…。とりあえず、光ヶ丘鉄道の関係者…白雪PさんときららPさんに、検査結果と修理箇所を、とりあえず説明しないとね…」
 2人は説明するのが気が重かった。この状態なのは、光ヶ丘鉄道での運用状況などを踏まえれば相応ではあるのだが。
「ああ、貨物線が廃止になって、機関区に取り残された。もう朽ち果てることを覚悟した時、あの声を聴いたんだ…」
「白雪さんの、鶴の一声か…」
 もしかしたら修理を諦めて、廃車するのも手ではないかと、この2人が言うかもしれない…そう思ったのか、C56は修理してほしいという思いを伝える。
「よみがえった貨物線…光ヶ丘鉄道で復活できたのは、白雪Pさんのおかげだったんだ。復活させてくれた、その恩に答え続けたい。だからこそ、再び走りたいんだ…」
 再び走りたい…鉄道車両であれば当然望むであろう願い。それを自身のためだけではなく、走る場所を戻してくれた、白雪Pのためでもある…その機関車は伝えてきたのだ。
「何とかするしかないわね…。最善策を取らないと…」
「貨物線時代の酷使、そして廃線後の長期留置…。そして光ヶ丘鉄道として復活後、数少ない営業車として奔走…。壊れるのも無理ないね。この機関車の修理が終わったら、ひばりヶ丘のC56も検査してみたいわ」
 白雪Pに聞いた、光ヶ丘鉄道の置かれている惨状…。鉄道営業を再開した以上、止めることも出来ない中で、C56はひた走った事だろう。碌な整備もされていなかったのは、整備担当者の経験不足とか、いろいろ理由はあるだろう。今はそれを議論しても仕方ない。
 そんな話をする中、絵美Pは全就業先であったひばりヶ丘鉄道にいるという同型車両の事を思い出していた。あのSLも風聞な整備が行き届いているかは不明瞭だった。
「あのC56も、長く使ってますからね…。」
「とりあえず、このC56の修理が先ね。何とか部品を集めないとね…。新たに作るとかして、揃えられればいいけど」
 不安材料が山積みになっている、光ヶ丘鉄道C56の大規模修理作業。とりかかるのも、諦めるのも、全てを決めるのは、所有者である光ヶ丘鉄道の責任者。まずは白雪Pたちに、その説明をする事からだった。
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