光ヶ丘鉄道の一日(小説版)

□光ヶ丘鉄道の一日(小説版)前編
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4,光ヶ丘鉄道の大ピンチ。C56故障(後編)
 運用できる機関車がC12とトーマスの2両だけとなり、運用もカツカツとなっていたある日。
「この鉄道には他に、機関車は無いのですか??」
 桃園Pが白雪Pに訊ねた。
「機関車が無い事はないんだけど…」
 白雪Pはあいまいな答えを返した。
「形式は8620形。ハチロクと呼ばれている機関車よ。しかし、それがどこにしまってあるのか、私には分からないのよ」
「えっ!?」
「白雪Pさんでも分からないんですか??」
 桃園Pらは驚きの声を上げた。
(C56さん曰く…前身の貨物鉄道が廃止になった時、1両はどこか別の場所に、私は機関区の奥で眠りに就いた と言ってたけど…。その1両は8620形なのね…)
「きっと、この鉄道のどこかに眠っていることは確かよ」
 8620形蒸気機関車がどこにあるのか、白雪Pにも確証はなかった。
「運用の合間にでも、探してみましょう」
 桃園Pらはそう言った。もし、その8620形機関車があって、整備の上でまともに走れるのであれば、予備を兼ねて交替できる機関車が増えるからだ。

 それから数日経ったある日、桃園Pは三ノ輪機関区で謎の引き込み線があることに気づいた。それはどう見ても、人目につかないように存在し、奥の方まで続いているのだ。
「この引き込み線は何かしら…」
 桃園Pは引き込み線を辿り、奥の方へと進んだ。
 やがて、何らかの覆いがかけられた大きな物体が目の前に現れた。
「もしかしたら、これって…」
 その覆いを外していくと、姿を現したのは1両の蒸気機関車だった。
「本当にあった…」
『君は一体誰だね…??』
「私の名前は桃園あかり。光ヶ丘鉄道の乗務員よ」
『そうか。私は8620形蒸気機関車だ。前はC56とともに貨物列車を牽いていたんだ』
 桃園Pは8620形に断りを入れると、慌てて白雪Pらを呼びに行った。

「まさか、三ノ輪機関区の中にあったなんて…」
 白雪Pは8620形機関車を見て、ただ驚きを隠せなかった。
『やぁ、白雪Pさん。久しぶりだな』
「ええ、貨物鉄道廃止の時以来ね…」
『私を見つけてくれた、桃園Pさんに聞いたが、今は光ヶ丘鉄道として再開していると?』
「その通りよ。あなたの同僚だったC56さん、そして他所から持ってきた蒸気機関車らで、今は走っているわ」
『そうか…』
「それじゃ、あなたをここから引っ張り出して、走れるようにきちっと整備するわね」
 C12形によって8620形は引っ張り出され、検修庫の中へ入れられた。白雪PときららPが各所点検を行い、必要な整備を行った。
「明日から試運転を行うわ。それで大丈夫だったら、営業運転に入ってもらうわね」
『分かった。これから再び走れると思うと、久々に気持ちが高まるよ』
 8620形はすぐにでも走りたいという気持ちを表していた。
 きららPは桃園PとともにC12形で運用に出て行き、愛乃Pはトーマスに乗り、既に出庫していた。
(8620形が見つかって、本当によかったわ…)
 白雪Pはそう思いながら、機関区の留置線へと向かっていった。
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