ひばりヶ丘鉄道の一日(小説版)

□プロローグ『この空の向こうには』
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 いつの時代も、人が来ては去り、また車両も同じ…それは乗客ばかりではない。鉄道を動かす乗務員でも、それは同じなのだ。これは、現在では別の鉄道にいる、ある車両と乗務員がいたころの、お話である。

1,記憶の中の乗務員
 その数日後、あおぞら銀河鉄道絢瀬駅留置線。特急仕業合間の休憩中、美住Pは自分あてに届いた手紙を見ていた。
「手紙が着てたわね… えっと… ひばりヶ丘鉄道、水ノ川きらら…懐かしい名前ね。」
 手紙を受け取った美住Pは、その差出人の名前を見て驚いた。
「えっ?きららさんから手紙が来たんですか?」
「ええ。今はひばりヶ丘鉄道で、元気でやってるって。毎日忙しくて大変らしいわ…。」
「どういう手紙ですか?読んで聞かせてくださいよ。」
 傍らで話を聞いていた371系は、その手紙の中身が気になっていた。
「えっと…。」
 美住Pは封筒を開け、中の手紙を取り出すと、その中身を読み始めた。
『美住車両管理室長、そしてあおぞら銀河鉄道の皆様、お元気でしょうか。私はひばりヶ丘鉄道という鉄道で、忙しく毎日を送っています。電車がたくさん走っていたそちらと違って、まだまだ出来たばかりのこの鉄道には、蒸気機関車とリゾートしらかみ、そして、私と一緒に移ってきたサンダーバードなどの、少数の車両しかいませんが、この鉄道を利用してくださるお客様のために、毎日頑張っています…。』
 途中まで読むと、差出人であるきららPのことを思い出していた。
「あの子…水ノ川さん(きららP)が入社してきたのは、今から6年位前の話かしら。」
「そうですね。今でも水ノ川さん(きららP)の事は覚えていますよ。サンダーバードを愛車にした運転士ですよね。確か、旅客列車の運用に関して、一番成績がよかったですよね。」
「指導教官で対象外だったけど、(きららPは)誰より腕前はよかった気がね。」
「もしかしたら、肩を並べていたかもしれませんね。蒸気機関車の運転も上手で。」
「知識の飲み込みが、ものすごく早かったのよ。みんなが帰った後、一人残って投炭の練習とかしてたり、人一倍の努力家でもあったわね。」
 今まで多くの後輩を指導してきた美住Pにとっても、ものすごく印象に残る後輩なのだ。
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