ForestDrop文庫

□怪盗ブルーイーグル
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『怪盗ブルーイーグル、参上』

「次の標的は絵画よ。喜多詩乃美術館で、中心の方に飾られている『太陽の軌跡』。あの絵画は館主の貯蔵品になっているんだけど、本当は別の方が持っていたものを騙し取ったものなのです。それを盗み出してください」
「盗品を展示か…」
 青葉台高校から少し離れたところに位置する教会で、ある一人の少年が聖女から絵画の話を聞いていた。
「その絵画『太陽の軌跡』は、本来の持ち主が美術館へ期間限定で貸し出されたものなのですが、その契約書を差し替えられて、貸し出すだけだったのが譲渡扱いとなって、手が出せなくなってしまったそうです。持ち主の方は、その絵のことで気が病み、ついには病床に…」
「分かりました。必ず盗み出します」
 その日の夜、少年は白いタキシードにマントを着け、白に青のラインが入った帽子をかぶると、ハングライダーで美術館へと飛び出した。
 その半日前に、美術館には怪盗からの予告状が届いていたため、連絡を受けた警察官らが大勢見張っていた。
「今度は盗ませないぞ」
「絶対に縄括りつけて、牢獄に突っ込むぞ」
「我が美術館に、盗む予告を叩きつけられたからには…」
 なかなか捕まえることの出来ない怪盗に対する執念を燃やす警官たちと、冷静な判断をして警官らの指示をする警部の声にも相当な熱が入っている。
「気を抜くなよ。白いつばさは神出鬼没だ。どこから出てくるか分からないぞ」
 その気迫を知るか知らずか、怪盗は美術館の屋根からその状況を見下ろす。
「毎回ご苦労様ですね。さてと、絵画をいただきに行きますか」
 怪盗は警察の制服に一旦身を包み、他の警察官とともに絵に近づく。犯行予定時刻になってから、こっそりと忍ばせていた煙幕弾を絵の前で爆発させた。
「ドン!!」
 爆発とともに煙幕が上がり、辺りが騒然とした。
「何があった!?」
「絵は無事か!?」
 同時に、絵に手をかけてはずした警官を見つけ、透明になる布を頭から全身にかけて被り、催涙スプレーを噴射させた後に、背後から声をかけた。
「持っていましょうか?」
「すまない。少しの間だけ…」
 それを受け取ると、怪盗は透明になる布を被ったまま床を這うように進み、警察官の群れから外れて目の届かないところまで来ると、盗み取った絵画に布を被せ、美術館を去った。
「あれ、絵画は何処だ?」
「えーっと、それなら… 私が守ろうと抱え込んだら、何か変なガスを浴びせられて… 背後にいた仲間に持ってもらったんですが…」
「…何をやっているんだ!?」
 警官たちを指揮していた刑事らは、急いで辺りを探させたが既に遅かった。すぐ近くに警察官の制服が放り捨てられ、そこには一枚のカードがあった。
『絵画は、確かにいただきました。 BlueEagle.』
「またやられた…」

 次の日、学校では怪盗の話で盛り上がっていた。
「また出たんだって」
「すごいな。警察官の隙をかいくぐって盗んじゃうんだもんな」
 しかしながら、怪盗ブルーイーグルには賛否両論あり、納得できない考えの人もいた。
「ったく、何が怪盗ブルーイーグルだよ。ただの泥棒だよ」
「すごいと思うけどねぇ」
 友人らと怪盗のことを話す少年『高村 隆治』は、父親が警察官という事もあり、この怪盗の存在には否定的な意見を持っていた。
「あのな。いくら事件の被害者を救っているとはいえ、盗んでいるものは盗んでいる。それが盗まれていたもので、それが本当の持ち主の所へ帰ってきてもだ」
「…でも、法律で取り締まれない犯罪で盗まれたものを、代わって取り戻しているのは、他の泥棒とは違うだろ」
「違うけどな」
「…なあ、隆人。怪盗ブルーイーグルのことをどう思う?」
 隆治の隣の席に座っていた同級生の一人が、少し離れた席に座って別の同級生と話していたところへ割って入った。
「どう思うって、聞かれてもな…。やっぱり、泥棒と変わらないんじゃないか?」
「やっぱり、隆治も孝仁も親が警官だから、怪盗ブルーイーグルを絶賛できないんだな」
「…一緒にするなよ。隆治の親は警視、俺の親父は普通の刑事だぜ? お偉いさんの子息となれば、変に絶賛できないのは当たり前だろ」
そこまで話していた時に学校のチャイムがなり、学科担当の教諭が入ってきたため、怪盗ブルーイーグルの話は持ち越しという事になっていた。授業も終わった放課後、隆治らは部活動の場所へといったが、隆人だけは学校を後に、近くにある教会へ向かった。
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