NoVEL V
□神(堕)の往く道
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「……やれやれ、嫌われたかね」
「あ、す、すみません……緊張して……」
私の背後から一歩進み出たアウラさんが頭を下げる。素直に恐ろしくて、とは言わないのが彼女の美徳でしょう。
「私(ワタクシ)ごときに御身を折ることはありませんよ。それに、非礼はこちらが先でした。申し訳ございません」
今度はセリスさんが頭を下げる。板張り床を見つめるアウラさんにも気配で伝わったのか、先に顔を上げ、慌てふためきながら止めてほしいと言う。顔を上げたセリスさんは慇懃な笑みを浮かべていた。
その顔に何かが加わって、雷色の視線が私に向く。
「――ところでルーザ君、何か失礼なことを考えていなかったかい?」
「いえ、事実に基づいた精神分析を一つ」
ツツと、紅い唇が上がる。笑みなのだが、怖い。視線をはずした。
「さて、しばらくはここで安全ですね。建前でいけば、オルダス国が正式な場で正式に身柄引き渡しを要求してくるまでは」
話を真面目な方向へ軌道修正。自分のことともあって、目を白黒させていたアウラさんの顔も引き締まる。
「――全く、ずるいな、キミは」
セリスさんも真面目会話へ参加表明。助かりましたか。