Akastuki

□クレープ屋、イタッチー
2ページ/5ページ




そんな店に、記念すべき一人目の客が来た。



「お前…何やってんだよ。」



赤毛の小さな変なおじさん。

体の節々の切れ込みみたいなものがなんとも痛々しい。



「サソリのまねを。」

「は?」


そいつは見るからに不快そうな顔をした。


「いけないか…?」

「いや、いけなくはないが…」



赤毛はセリフを途中で濁すと、

クレープの生地を焼く俺の手元を凝視する。



「そのちんちくりんな料理裁きを、俺の真似事と言ってほしくはない。
俺はもっと料理上手いし。」

「そりゃそうだろうな。
くぐつ作れるほど器用なんだからちんちくりんは。」

「誰がちんちくりんだ下まつげ。」

「何とでも言うがいいさ赤毛ちんちくりん、略して赤ちん。」

「赤ちんてやめろよ。なんかフロチンみたいだろ。
つーか俺ちゃんとパンツはいてるし。」

「知らん。…あ。」



赤ちんと喋っていて、クレープ作りに集中していなかったせいか、

またビリッといい音をたてて生地は破れた。



「やっちゃった。」



赤ちんのせいだ。


この赤ちん!!フロチン!!



「仕方ない…これやるよ。」


破れた生地に適当に生クリームをのせて、赤ちんに差し出す。


「え?いいの?」

「ああ。200円な。」

「金とんのかよ!!」



赤ちんは受け取りかけていた失敗作の薄汚いクレープを
俺の顔面に投げつけた。





.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ