Akastuki
□サソリ座の女。brothers
1ページ/2ページ
『弟の願い』
BARサソリ座の女、
その店内には今日も例の客4人と店長がいる。
が、いつも仲むつまじそうに対談を楽しんでいる彼らも、今日ばかりは少し様子が違う。
原因は、うちは兄弟にあった。
彼らはカウンターの後ろにある机を挟んで向かい合わせになっているソファに各々座って、何やら視線を絡ませあっていた。
蠍「え、何びーえるん?」
と店長。
デ「どうして旦那はそう危ない方向にもってこうとするんだよ、うん。」
蠍「旦那じゃないマスターだ。」
傍観者たちがひそひそとそんな会話をしていると、兄弟の兄の方が突然騒ぎ出す。
イ「サスケ!!そんな熱い視線をさっきから俺に向けやがって!!!
照れるだろ!?もう兄さん顔真っ赤〜!!」
サ「は!!?アンタ、勘違いにもほどがあるだろ!!
俺は睨んでただけだ!!!」
イ「え?誰を?兄さんを?」
サ「そうだよ分かれよ。」
イ「いやいやいや。
そんな、睨んでたって…wwサスケww」
サ「何。」
イ「上目づかっ…wwフフww」
サ「なにこの人、超キモいんだけど。」
イ「…知ってるwwふふふww」
サ「それ認めるのもどうかと思うが…」
イ「ふふww…あはww」
サ「…やべぇ、今悪寒が。」
イ「ってゆーかサスケ、
何で、俺を睨んでたんだ?俺なんか悪いことしたのか?兄さん的にはまったく心当たりがないんだが…。」
サ「は?心当たり皆無とか、どんだけ自分の行動把握できてないんだよ。」
イ「行動?」
サ「ああ。」
イ「…えーっと」
サ「っ…あのなぁ、」
イ「うん。」
サ「毎晩、夜中の2時ぐらいに人のベッドん中入ってくんのいい加減やめろ。
睡眠妨害だ。昨晩もそれやられておかげで睡眠不足だよ。ほら、クマできちゃってんじゃねーか。」
イ「ああ、ホントだ。」
サ「ホントだって、軽く流すなし。
今朝、男子ながらにファンデーション塗ってカモフラージュしてこうかと思ったほどだかんな?
今日撮影日だったのに。」
イ「ああ、それで昨日は早めに布団入ったんだな?」
サ「ディレクターとかも言ってたけどこれから俺忙しくなるんだよ。大変なんだよ。
それなのに毎晩睡眠邪魔されてたら俺、体力どころか精神までボロクソになっちまうだろ。
だから、」
イ「もう布団の中には入ってくるなと。」
サ「ああ。」
イ「…そうか…でも、許せサスケ。また今度な。」
サ「待った。今そのセリフ無理矢理使っただろ。かなり違和感あったぞ?」
イ「そうか。」
サ「まあ、そんなんどーでもいいから明日から頼むよマジで。」
イ「…悪いがその頼みは聞いてやれん。」
サ「しばくぞ?」
イ「と、言うのもだな、
俺はどうも前世がうさぎだったらしい。あのぴょんぴょんっていううさぎな?
だから夜とか一人になるとどうしようもなく寂しくなって、気がつけばいつも俺の目からは涙がこぼれているんだ。」
サ「んな知らねーし。なんだようさぎって。キモいんだよ。
そんなに寂しかったら俺じゃなくて母さんのとこ行けばいいだろ?」
イ「俺はマザコンじゃない!!」
サ「じゃあ父さんのとこは。」
イ「ファザコンでもない!!」
サ「なんなんだよお前。」
イ「俺は、ブラコンだ。」
サ「だろうな、言うと思った。」
イ「フフフンww」
サ「え、何フフフンって。
別に今のは得意げになる所じゃないよな?
もー、お前らもぼうっと見てねーでこいつに言ってやってくれよ!!」
そうカウンターに座っている三人に向かって嘆くサスケ。
蠍「…いや、いきなり話振られても。」
ナ「兄弟ゲンカは自分たちで解決してくれ。俺は知らない。」
デ「同感。あ、マスター、ジンジャーエールひとつ。」
嘆いて助けを求めたものの、完全にうちは家の兄弟ゲンカに無関心な三人。
サ「…冷たッ」
普段は精神の強い彼も、さすがに傷ついた。
イ「…サスケは、俺のどこが気に入らない?」
サ「…いきなり真剣な面持ちになったよ彼。
…気に入らないとこ?んー、全部。」
イ「ス…ストレートすぎるだろう…。
もっと柔らかく来てくれるのかと思った…。」
サ「フン、誰が。
あ、でも、顔と身長だけは認めてやる。」
イ「できれば性格の方も認めてくだされば…」
サ「欲張りはよくないぞ?」
イ「欲張りって…
だったらサスケは、この兄さんの寛大な心まで否定するつもりか!!」
サ「その寛大さが、裏目にでて変態と化してるんだろうが。」
イ「え!?」
サ「今気づいたのか!?」
イ「そ…そんな理論、初めて聞いたぞ兄さん。
大体、心が寛大なら裏目に出たっていいじゃないか!!このご時世、ここまで心広い奴なんていないぞ!?」
サ「あ、今自分のこと遠まわしに誉めただろ。」
イ「なっ…」
サ「まぁ…心広いのはいいとして、べたべたしてくるのはどうかと思う。もうちょっとアンタ、爽やかになれないのか?」
イ「兄さんは十分爽やかだぞ!?」
サ「なぜ断言できるの!?」
イ「だって笑顔とか、爽やかだろう?」キララン
サ「どっかのホストみたいな笑顔になってる。」
イ「…ホント?」
サ「何にやついてんだよ。俺別にほめたわけじゃないんだけど。」
イ「またまた〜ww素直じゃないなぁサスケは〜ww」
サ「うざ。ポジティブにもほどがあんだろ。」
イ「ポジティブで何が悪いww」
サ「…って、話戻すけどベッド潜り込みの件、」
イ「次回に先送りと言うことで。」
サ「…何でだよ。」
イ「だってそんな…俺の唯一の趣味だったんだよ…サスケを抱きながら寝るの…。」
サ「(トマトジュースを飲みかけ、)ブッ」
イ「なのに、それさえも取り上げられるなんて…」
サ「あの…今…抱きながら寝るっつった?」
イ「?言ったなぁ。」
サ「(カウンターの三人向かって)…おい、誰か俺のことこれから毎晩泊めてくれる奴いねーか?」
蠍「別にいいけど、俺に襲われることは覚悟しな。」
サ「…。」
イ「おいこらサソリ!!!我が弟に何てことしようとしてんだ変態!!」
サ「お前が言えた義理かよ!!!」
イ「何!!?兄さんはアイツみたく変なことなんて考えてないぞ!?」
サ「は!?
じゃあさっきの、俺を抱きながら寝るのが趣味って、アレ何だったんだよ!!
サソリの方はまだ未遂ですんでるけどお前、もう実行しちゃってんじゃねーかよ!!!
俺婿に行けなくなるからやめろよマジで!!!」
イ「…実行?」
サ「そうだよ、何だよそのハテナマーク!!」
イ「サスケ…お前ちょっと勘違いしてないか?
兄さんはサスケのことを抱きしめながら寝るのが趣味って言っただけで、そんな…R18的なこと…もう…変態はお前だろっ、サスケww」
サ「なんでちょっと嬉しそうなの!!?」
イ「いや、お前も16だなぁ…っと思ってなww」
サ「ホントにそう思ってたか?」
イ「フフ。」
サ「うわ、その顔信用できねー」
イ「ま、そーゆー事だ。
サスケは俺からは逃げられない。諦めろ、弟よ。」
サ「そーゆー事ってどーゆー事だよ。
つーか今の、ストーカーが言うようなセリフだった。」
イ「なっ…兄さんはストーカーじゃないからな!?」
サ「今更否定しなくても、誰もアンタの肩持つ奴なんていねーよ。」
イ「そんな…」
サ「…いいか?
今晩から一切、俺のベッドん中には入ってくんな、つーか部屋に入ってくんな。」
イ「え!?部屋まで!?そしたら兄さん、サスケの部屋掃除出来なくなるぞ!?」
サ「いーよしなくて!!
俺的には兄の魔の手が降りてくるより母の魔の手が降りてくる方がよっぽどましだ。」
イ「なに!?母さんに負けた!!」
サ「もともと勝ち目もなかったけどな。」
イ「…じゃあわかった。
サスケ、ジャンケン勝負だ。」
サ「は?いきなり何で。」
イ「ジャンケンしてサスケが勝ったら俺は大人しく身を引くとしよう。だが、俺が勝ったら部屋はおろかベッド侵入もお前には諦めてもらう。」
サ「ずいぶんと重いのが乗っかったジャンケンだな。」
イ「勝負は一発だ。勝っても負けても文句なしでいくぞ?」
サ「…わかったよ。」
弟がそうゆっくり頷くと、
兄弟はお互いをしばらく睨み合った後、静かにその真剣勝負を始める。
「最初はグー、ジャンケン…」のかけ声のあと、ポンと言う合図でそれぞれ手を出す。
サ「俺グー!!」
イ「兄さんパー!!!」
サ「なッ!!?」
イ「やった勝った!!!
フハハハハ!!!残念だったな弟よ!!」
サ「えー!?俺嫌だ!!こんなんで毎晩ガマンしなきゃいけないなんてマジでストレス溜まる!!!」
イ「いずれ慣れるさww」
サ「ムカツク…」
イ「ああ、そういやサスケ、
今朝目覚ましテレビでやってたんだけどな、
獅子座の今日の運勢、『賭事は控えた方がいい』だったぞ?」
サ「まさかお前…それ知っててジャンケンしようっつったのか?」
イ「知ってなきゃ言わないさww」
サ「お前は兄としてだけじゃなく人として最悪だな。」
.