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『冬の淑女』





最近電車乗ってて思うこと…。



「暑い…!!」



私香燐、16歳は今、汗だらだらです。



なんだよも〜

せっかくおニューのトレンチコート着てバッチリメイクでセレブな大人気取ってたのに…!!



…まぁ、コート脱げばいい話何だろうけど、

でもこれ、気に入ってるやつだから!!!


絶対意地でも脱がねぇ…。



そうやって暑さと張り合っていても、出てくるのは汗と涙の結晶というか、ぶっちゃけ汗だけで…。


でも、気品のある女っつーのは!!

人前で絶対汗なんかふかねぇんだ!!


絶対タオルなんて取り出すもんかーッ!!



だけど、そうやって意地を張れば張るほど、汗の吹き出る量が増えてる気がするのはウチだけか…?


くっそー、ムカつく。


つーか暖房効き過ぎじゃね!?


まわりの奴らもみんな汗拭ってんじゃねーかよ!!


乗務員になんで暖房止めないんだよ!!ってクレーム言いに行きてぇ…。


でも気品のある女はそんなことしちゃだめだ!!


いつでもどこでも、しとやかに。



そうやってウチは、じっと暑さに耐えていると

額から伝ってきた汗が、アイラインの上に下りてきた。



なっ!!?ちょっと待てよ!!


今日は特にライン上手く引けたんだぞ!?


そんな…汗なんて来たら、溶けちまうじゃんかぁ!!!



案の定、そっと指先でアイライン上の汗を取ってみると
無色であるはずの液体は微妙に黒く染まっていた。


こうなるともう、誰にも会いたくなくなる。


知り合いにばったり出会ったりしませんよーに!!!


ウチは熱心に心の中でそう祈った。


けれど、


どうやら神はウチのこと嫌ってるらしい。


「あれ?香燐?」


後ろから知っている声をかけられた。


「…んだよくそ河童。」


今すぐそいつをぶっ飛ばしてやりたかったけど、ウチは今、気品のある女を演じているから無理だ!!


うわー!!ここが電車じゃなけりゃこんな屈辱的な思いする事なんてないのに!!


「…ねぇ香燐どうしたの?気分悪いの?ずっと下向いてるけど。」


ウチがとことん無視する作戦で乗り切ろうとしたら、
水月はシャレにもならねぇ、ウチのことを心配してきた。


「悪いに決まってんだろ。」

ウチはそう返す。


お前と出くわしちまったからな。

原因はお前だ。

お前がここから立ち去ればウチは一気に復活するし。


「…だったら電車降りた方がいいんじゃない?
こんなとこで吐かれても困るしさ。」

「吐かねぇよ。」


あーもー頼むから向こうに行ってくれ。


吐くとか気品のある女演じてる奴の前で言わないでくれ。


「ってゆーか、」

「うん?」

「香燐、何で僕に顔見せようとしないの?」

「え…」

それは…とどもるウチ。


こ…コイツ…


スゲー痛いとこついてきやがった。


「あ、まさかメイク失敗したとかww」

「なわけねーだろ!!」


何でコイツはこんなにテンション高いんだ…?


まさか、

ウチが気分悪いのをいいことに調子に乗ってる?


…生意気な。



「違うの?
じゃあ何?」

「何でもねーよ!!いいからあっちいけ!!」

「そーいわれちゃうと、逆に行きたくなくなるんだよねぇ。」


そう言ってニヤツク水月。



ケッ、この性悪がッ



「あ、ついでに、
サスケも君の後ろにいるの知ってる?」


突然水月はそんなことを言ってきた。


ウチはびっくりした反動で、思わず後ろを振り返ってしまう。


しかし、そこには、サスケの姿なんてなくて。



「水月…テメェ…」

「ブッ、なにその目!!
周り真っ黒!!リアルパンダだリアルパンダ!!」


汗によって悲惨な姿にされたアイメイクを見た水月は、それを指差して爆笑しだした。


そいつのその行為に、ついに怒りのバロメーターを越えてしまったウチは、


おもっくそこのアホにハラパンしてやった。



…あーあ。



気品のある女目指してたのに、

これじゃあ、気品もクソもないじゃんかよ。








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管理人は髪の毛。せっかく決まった髪の毛が汗でぐしゃぐしゃになることが悩みです。

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