Akastuki

□頭の鈍り
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人間は、ちゃんと頭を使わなければ回転が鈍ってしまうと言うが、


天才とうたわれた俺の弟も、例外ではなかった。





「くそ…覚えられねぇ…。」


時をさかのぼってまだ俺や大蛇丸が殉職していなかったとき。


NARUTOの第二部、疾風伝が始まってから初めて我が弟、サスケが出演するということで、

その前日、彼は必死になって台本を覚えていた。



「サスケ…お前はめったに喋らない役どころなんだからすぐに覚えられるはずだろ…。
なのに何で3時間近くも台本とにらめっこなんかしてるんだ。
少しは兄さんと遊べ。」

「うるさい今集中してんだよ。邪魔するな。」

「冷たいなァ…。
兄さん寂しい…。」

「じゃあアンタもセリフ覚えろよ…。」

「俺はもう全部覚えたからな。」

「チッ…。」

「何だ嫉妬か?」

「まさか。」

「サスケアレだろ…。
久々の台本覚えだから脳が鈍ってんだろう。
だからなかなか覚えられないんだな?」

「俺に限ってんなことあるわけねーだろ。」

「お前も人間だ。頭に乗るな。」

「のってねーし。っつーかマジうるさい。
いずれ殉職するみのくせに出しゃばるな。」

「ん?分からないぞ?
もしかしたらお互いに仲直りして2人で仲良く里に帰還するかもしれない。」

「それはないね。
俺がちゃんと殺すさ。何のために大蛇丸んとこ行ったんだって話だからな。」

「まあ…確かにそうだけども…。
でも途中でナルトくんあたりに説得されて心変りして、『やっぱ復讐しません!!』ってストーリーになりえなくはないだろ?」

「なァ、ちょ、マジ黙って。
疾風伝初の俺の勇姿のお披露目何だからさ。NG出したくねーんだよ。
初回の撮影でいきなりNGとかカッコ悪いだろ?」

「大ジョブさ。」

「軽く言うなよ。
久々のナルトとの共演だってのに。
アイツにだけはなめられたくねーの。
『うわwサスケ初回からNG?プッw』とか言われたくねーの。」

「なるほどな…。その気持ちはなんとなく分かるが、ちょっと緊張しすぎだお前は。もう少しリラックスして覚えなさい。
なんなら兄さんがリラックスできるような昔話をしてやろうか?」

「別にいい。」

「そう言わずに聞け。1分で終わる。
…あのな、俺もな、初めてナルトくんと共演した時、3回セリフをかんで3回NGを出してしまったんだ…。お恥ずかしい…。」

「それ知ってる。
その時俺も現場にいたし。」

「…あれ?」

「あのあとお前裏でめっちゃ悪口言われてたぞ?」

「マジで!?誰からッ」

「レギュラーキャスト陣から。」

「え、どうしよう…兄さん泣きそう…。
ってゆーかそれお前も入ってたのか…?」

「当たり前だろ。そもそもとして残酷なイタチの悪口大会にしたの俺だし。」

「何!?」

「『兄貴うざーい』って一言いったら、一気に火がついた。」

「衝撃の真実だなそれは!!かなりショック何だけど…!!
…あの、一応聞くが…どんなこと言われてたんだ俺は…。」

「…聞いても泣くなよ?」

「…うん。」

「…まず、ウザいから始まって、
セリフ噛みすぎなんだってばよ、活舌悪いのね、下ったらずだぶりっこ、ぶりっことかイタチさんキモイ、私はあの下まつ毛が気に食わないわ、青春してなさそうだ、性格悪そう
…で、最終的には早めに殉職しろ。」

「…どうしよう…もうあの人たちと顔合わせができない。
うう…ヤバい泣きそう…。ってゆーか泣く!!
もう無理だ兄さんは、泣く!!」

「頼むから俺の前では泣くな。
(台本を差し出し)…セリフ、見てくれ。」

「…ラジャ。
じゃあ初めからどうぞ。」

「……ん?」

「…サスケ?」

「…ダメだまだ覚え切れてねぇッ!!
ヤバッ」

「え!?まだ一行目だぞ!?」

「うわー!!マジで頭鈍ってるわ俺!!
頭に乗っててごめんなさいッ
このままじゃ確実に裏で叩かれるよ俺…!!」

「兄さんが火種をまいてやろうか…?」

「何だそれは仕返し!?」









翌日、
俺は弟のNGを期待して、一緒に現場までついて行ったのだが、
見事に期待は裏切られた。














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春休み、ほとんど脳みそを使っていなかったので久々にやった宿題は難関でした。

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