10年後SS
□沈む恋、深い愛
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初めてお互いの気持ちが通ったのは、中3のとき。
嬉しくて
嬉しくて
いつも一緒にくっついていたくて。
誰かと一緒にいるならば、それだけで腹が立って。
片時も離れていたくない、そんなこともあったな…と、懐かしく思う。
あれから、10年。
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「獄寺くんなら、あと1ヶ月は戻ってこないよ」
「えー。マジで?参ったな。ちょっと見てもらいたいもんがあったんだけどな…」
俺の執務室に報告半分、雑談半分でやってきていた山本が、獄寺くんの不在に困り顔。
「何?俺で手伝えるなら…?」
「ん?ああ、ボスの手を煩わせるようなもんじゃねぇから!ま、今晩でも電話してみるわ」
にかっと笑って、山本は答える。
その昔と変わらない笑顔に、せつなくなる。
(俺たちは、昔とはずいぶん変わっちゃったよ、獄寺くん)
「…なんだよ、ツナ。浮かない顔してる」
「え?そうかな」
慌てて、笑顔を作るけれど、間に合わない。
山本は、じっと俺の顔を見ながら問いかけてくる。
「なぁ、ツナ。なんか悩み事か?」
「や、そんな。大したことじゃないよ」
「なんだよ、水臭いな。言ってみろよ。…ま、仕事のことだったら俺に相談するよりは、獄寺のほうがいいだろうけどな」
明るく聞いてくる山本。
頼りがいがあるのは昔からだ。
…こんなこと、ずっと誰にも言えなくて、ずっと胸に抱えているのだ。
誰かに話してしまえれば、少しは気が軽くなるだろうか。
他の人たちだったら、こんなときどうするのだろうか。
「仕事のことじゃないんだけどさ…」
「……獄寺とうまくいってねぇの?」
「!!!!」
突然の核心に、思わず山本の顔を見上げる。
「…隠してるつもりだったんだろうけど、バレバレだったぜ。中学のころからだろ?」
「〜〜〜〜〜ッ!!」
「ハハハ、赤くなってる。ツナ、かわいー!」
「かわいいって、おかしいだろ・・・!」
仮にもボスに対して!!
でもまさか、そういうことには無頓着そうな山本に付き合い始めていたころからばれていたなんて、正直驚いた。
「そういう悩みなら、確かに内にためちまうよな。…グチでもなんでも話してみろって!それだけでもスッとするぜ!」
ぐらぐらと揺れる。
話してしまおうか…。
山本ならば。
「…俺は、ツナの味方だからな!!」
昔からのあの笑顔でダメ押されてしまったら、俺は、もう胸にしまっておくことができそうになかった。
「…そしたらさ、今日の夜、一緒にご飯食べに行かない?」
「いいぜ?時間と場所は、あと連絡くれよ」
「うん」
じゃ、後でな!と山本は執務室から出て行った。
・・・・どうしよう。
今日の夜まで猶予を自分で作った。
(…当たり障りのないところまでだったら、ちょっと話してしまえば、楽になれるかも)
自分たちの関係を、これまで誰にも話したことはない。
当然、リボーンは気づいていたが、暗黙の…ということで、お互い改めて関係について話を出したことはなかったし。
「…しかし、バレバレだったなんて…」
ひょっとして、ほかのメンバーも気づいていたりするんだろうか…。
そう思うと、次に会った時にみんなの前で挙動不審になりそうで、重いため息が漏れた。
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