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□自宅プラス
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うりちゃんが失恋したばかりのレーンを慰める話

*うりちゃんの依頼を受けて、定期的にレシピを渡すノアさん。たまにレーンが配達に駆り出されます。



――――――
うりと一緒に住んでいたにぼしが突然家を空けてから数週間。
彼が居なくなったせいでうりは家事をしなければいけなくなったために彼女はにぼしに怒りを
抱いている。しかし帰宅することはないかと思い連絡を取ろうと電話をしていた。
けれどにぼしがうりの電話にでることはなかったが、にぼしから突然連絡をくることはたびた
びあった。
『久しぶり、うり〜』
(あんた人の電話にでないくせにぬけぬけと電話してきて…)
『なぁ、最近近所のレーン君が元気なくてさぁ。師匠に聞いても理由わかんなし、うりはなに
が原因だと思う?』
「っ、知らないわよ。」
――――――

前日の夜に干していた洗濯物を、面倒くさいと思いながらもうりはのんびりと畳んでいた。
そんな時にチャイムが鳴った。
「?…ノアさんかな。」
―ガチャ
「あ、どうも。」
「え!…あ、はい…どちらさま…?」
はいっ、と返事をして勢いよく扉を開くとうりは驚いた顔をした。彼女の目の前には想像した
相手ではなく身長のだいぶ低くなった少年が立っていた。知らない相手がいたことに動揺して
うりは目を泳がせた。あまりにも驚いた様子に戸惑って立っていた少年が困った表情をした。
「あの、始めまして、レーンって言います。ノアから使いを頼まれてきたんですが…聞いてな
いスか?」
「ノアさんが…でも、聞いてないけど。」
「マジッすか。」
小さな声でレーンはちゃんと言っとけよ、と悪態をついた。おそらくノアに対してだろう。
レーンが悩んでいる前でうりは彼の名前を頭の中で思いだしていた。
(…レーン君、って。この前にぼしが話していた子よね。)
数日前のにぼしとの会話を思い出して、うりは合点がいった。元気のないレーン君。にぼしが
わざわざ気にするくらいだから表にだいぶ見える形で落ち込んでいたのだろう。
少しの間悩んでからうりはあの、と不機嫌そうにしているレーンに話しかけた。
「あ、すみません。届け物があったんですよ。これ。ノアから。」
「あ、うん。ありがと…レーン君、だよね?」
「はい。」
「急いでる?」
「へ?…いや、そんなことないですけど。」
「よければお茶飲んでいかない?ノアさんレシピ届けてくれるって言ってたけど、ご褒美にお
菓子もつけるようにするって言ってたから。一緒に食べない?」
「…はぁ、それじゃあお邪魔します。」
(最初に俺見たときは結構おびえてたッぽいのに…人見知りじゃ…ないのかな?)
不思議に思いながらも、レーンはおそるおそる部屋の中に入った。





持ってきた荷物を置いて、レーンは入り口に近い席に座って待っていた。宣言通りにうりは慣
れない手つきでお茶の準備をしていた。手持無沙汰にうりの背中をみつめていると、突然声を
掛けられた。
「初対面でこんなこというのもあれだけどさ、レーン君て最近落ち込んでるって噂聞いたんだ
けど。」
「っは!?だ、誰にそんなことを聞いたんスか!?」
「にぼし」
「んな!」
(あの人俺の知らないところで何を言って…!!)
「何かあったの?」
「…いや…別に何も…」
(初対面の人に失恋したなんて言えないよ…)
あまりにも突然の質問に驚いてレーンは思わずそっぽをむいて困った表情を隠した。
黙るレーンを振り返り、うりは急須にお茶っぱを入れる手を止めた。
「ふうん。まぁどうでもいいんだけどね。」
「…え?」
うりの言葉にレーンがまた彼女の方に顔を向けた。
「悩みなんて結局本人が解決するものだし話したくない人からわざわざ聞くのは面倒だからね
。」
「…はぁ…?」
(なんだこの人…)

お湯を入れた急須をと湯呑を運んできたうりは、肩をすくめた。
「まぁ、でも話したくなったら誰かに話すといいよ。きっとスッキリするし。はい、お茶。」
「…あ、どうもッス。」
(初対面の人間を部屋に入れて質問してくるくせに、追究はしないのか…変な人だなぁ)
うりの顔を見ながらレーンは湯気の立つ湯呑に口をつけた。
「うっす!」
「ぐ…ま、まだこうゆうのは得意じゃないのよ!」
「ぶっ…!」
「そんなに笑うな!」
(格好付かない人だな…)
「いや、だってこれ、お湯じゃないすか。」
「うるさい。」
「…はぁ、うりさんって変な人ですねー」
「ちょっと家事ができないだけです。煎れられなくたって生きていけるし。そのうちできるよ
うになるから。」
「生きていけるとかそういう問題すか?」
「そいう問題よ。いいから飲みなさい。」
「…はぁ」
うりの不機嫌な様子をうけて、レーンはしぶしぶお茶を飲み干した。やっぱり味はしなかった
けど、強い視線をうけている分表情にだすことはできなかった。お茶を飲み終えたと同時にレ
ーンは荷物を抱えて立ち上がった。
「お茶ごちそうさまでした。じゃあ、俺はこれで。」
「うん。」
「…ひとつ、いいすか?」
「ん?なによ。」
「ノアにお茶の煎れ方ならってくださいね。」
「!…余計なお世話よ。」
(人が慣れないのに煎れたのに、失礼な!)
歯を見せて笑顔をつくったレーンは、それじゃあと腕をあげて部屋からでていった。人が居な
くなったことでしんっとなった部屋を振り返りうりはふうと息をついた。
(慰めてあげよう…って思ったのに。お茶薄いとか、失礼な…まぁ、最後に笑顔を見れたから
まぁいっか。)






(人見知りっぽかったのに、部屋に入れるなんて変な人。お茶も薄かったし…ラト姉と同い年
なんて信じられないなぁ。)
歓迎されている印象を受けなかったレーンは、うりとのやり取りを思い出してため息をついた
。それでも、いつもと違う人とのかかわりに頬が緩む。
(…ま、楽しかったし…いっか。)










*一部沙都さんのつぶやきを抜粋しています。



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