企画小説部屋

□手とてと手
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 南国・・・

 沖縄の夕焼け空の下、ゆったりとした速度で海辺を歩く一組の家族。

 裸の赤ん坊が夫婦と呼ぶには若すぎる男女の少し前を時折はしゃいでは駆け出し、小さな貝殻を見つけて嬉しそうに両親を振り返る。

「あんまはしゃぎ過ぎてすっ転ぶんじゃねーぞベル坊」

「その貝殻は記念に家まで持って帰りましょう」

「アイダブ!」

 二人の声に満足げに大きく頷いているのはベル坊。そしてその後を眠そうにポケットに手を突っ込んだまま欠伸をして歩いているのは男鹿。それと、夕日に照らされてまるで聖母のごとくベル坊に微笑みかけているのはヒルダ。

 男鹿とヒルダは今、沖縄の景色を見てみたい!と目を輝かせたベル坊のため、自由時間ではないが、ホテルを抜け出して近くの海浜を散歩していた。

 本当は、夫婦でも親子でもない三人だけれど、沖縄の海に沈みゆくオレンジの太陽の光を浴びている三人の間には、本物のそれとたがわぬ雰囲気があった。
















 一方その頃・・・


「あれ?男鹿ー、ヒルダさ〜んベル坊〜?」

 古市が宿泊するホテルの部屋に、ホテル内の土産物屋から戻ってくると、そこに同室である男鹿の姿はなかった。

「どこ消えたんだ?」
 
 
 ちょっと見てみようぜと男鹿を誘った時

「土産とかどんなもんが良いかとか分かんねーし。ヒルダがアネキ達の分選ぶからいいわ」

・・・そう言われたので一人で行って、なるべく早めに帰ってきたというのに。部屋にいないとはどういうことか。ただでさえ、半ば無理矢理聖石矢魔の修学旅行に着いて来ただけの人間なのだ。何か問題を起こすようなことがあっては困る。
 
 古市は、とりあえず探しに行こう・・・と部屋を再び後にした。

「ヒルダさんも見当たらないし、絶対三人でどっか行ってるはずだ」



 だとすればまた何だか良い感じになってしまっているかもしれない。

 そんなことさせるか!これ以上男鹿ばっかりに良い思いをされてたまるか!




 最初はただ友人を探しに行くという理由だったはずなのに、いつの間にか男鹿のラブコメ的展開阻止という目的から、古市はホテル内を奔走する。







 
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