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□汽笛
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ライアーゲームの最中、アカギコウタと神崎直が行動を共にすることが多くなった。

以前のラウンドでは左程気にならなかったが、今回は顕著に密になっているような気がする。

秋山は作戦会議が終わり又しても二人で何処かへ消えようとするその背に思わず呼び掛けた。



「あのさ。ちょっと話があるんだけど」

「何ですか?」



直はちらりとアカギを一瞥すると、アカギが微かに頷いたのを認めて秋山に視線を戻す。

その様子に何かちくりとしたものを感じながらも秋山は彼女に手招きして、椅子に座るよう促した。

素直に椅子に腰掛けた直はまた同じ科白を繰り返す。



「いや、何て言うか。君とアカギってそんなに仲良かったっけ」

「どうしてですか?」

「いや、別に……俺には関係ないけど、何か作戦でも立ててるのかと思って」



途端に直はどこか機械的ともとれる笑顔を浮かべて呟いた。

そうでしょうね。

秋山さんには関係ないですね。

そして徐にゆらりと立ち上がると、彼に背を向けて言い放った。



「私、アカギさんとお付き合いさせていただくことになったんです」



秋山は驚きに瞠目して、その背を見遣った。

しかし彼女は振り向こうとはしない。

その表情を知ることは叶わなかった。



「一週間前に連絡を貰って、二人で会ったんです。その時に告白されました。ずっと私のことを想っていてくれたって。これからも、ライアーゲームが終わった後でも、ずっと私の側に居たいって」



一つ一つの言葉が彼の心を突き刺しては通り抜けてゆく。

それはどれも何処か既視感を覚えるような言葉ばかりの羅列だった。

その理由を今更知ってしまうことは恐ろしくて、思わずその背から目を逸らす。



「きっとアカギさんなら、私のことだけを見てくれるって思いました」



……乗り遅れた電車は既に、遠い。

誰も居ない構内にただひとり取り残されたかのような感覚を覚えて、秋山は呆然と立ち尽くした。

大切な大切な何かを乗せて、電車は走り出してしまった。

そしてただ加速してゆく。

辿った線路を引き返すことなど決してせずに。





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