ranma 1/2

□枷
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──時々思うことがある。

あいつに枷をつけて閉じ込めてしまって、俺だけを見るようにできたらいいな、って。

狂ってるって、自分でも思うけれど。

どうしようもなくそんな衝動に駆られそうなときが、確かにある。








「あ、かすみおねえちゃん。明日からあたし、ゆか達と旅行に行って来るね」



夏休みも中盤に差し掛かったある日、居間で寛いでいたあかねが唐突に洗濯物を畳む姉に言った。

乱馬はテレビのブラウン管に映るボクシングマッチの中継を見遣りながらも、耳に全意識を集中させる。



「あら。そうなの?明日は夜に花火があるのに」

「えっ、どこで?」

「小さいお祭りなんだけどね、隣町でするみたいよ。残念だわ、浴衣着せてあげようと思ったのに」

「えー…」



至極残念そうなあかねの声を、のほほんとしたかすみの声が追う。



「乱馬くんとふたりで見に行ったらよかったのに」



はあ!?と顔を染め上げたあかねが過剰に反応した。

──なんだよ。俺と行くんじゃ不服だったのか。

乱馬は不貞腐れたように唇の先を尖らせた。



「な、なんであたしが、こんな変態と一緒に花火見に行かなきゃいけないのよっ」



かちんと頭にくる。乱馬はごろりと体の向きを変えると、聞き捨てならないとばかりにあかねを睨んだ。



「おい。誰が変態だ、誰がっ」

「あんたに決まってるじゃない」

「俺のどこが変態だっ」

「全部よ!」

「あかね、言い過ぎよ」



かすみがやんわりと嗜めても、もちろんあかねは聞く耳もたずといったところだ。

──なんだよ。なんなんだよ。俺は何にも言ってねえだろ。

乱馬は苛々しながらむくりと上半身を起こした。

そして、否応がなしにとどめの一言が口を突いて出る。



「─…浴衣なんか着ても、おめーみてえな色気のねえ凶暴女には、似合わねえだろ」



くしゃりと歪むあかねの顔と、ばちんと目の前で鳴る音。

頬に感じるひりひりした痛みを、乱馬は掌で押さえつける。



「乱馬の馬鹿!あんたなんか大っ嫌い─…もう知らない!」



そうして捨て台詞を残して去っていく許婚。

その背を追い掛けることができず、ただ黙って見送ることしかできない。



──いつからだろう、この変わらないやりとりを繰り返しているうちに。

彼女をどうしようもなく、自分のそばで縛り付けておきたい、と。

そんな凶暴な衝動を抱くようになったのは。







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