ranma 1/2
□有効的活用法
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「うらやましいわね、変態は」
「誰が変態だっ!」
「さあ、誰のことかしらね」
ぼそりと呟いて、乱馬の若々しい肉体をぼうっと眺めた。
六十を越えた辺りから、乱馬は殆ど若い姿でいることが多くなった。
勿論そのほうが格闘のトレーニングも続けられるし、便利であることは間違いない。
あたしばかりが、年を取っていくみたいだ。
乱馬を置いて行って、あたしだけが、着実に萎れていくみたい。
「─…あたし、あんたより確実に先に死ぬわね」
「は?何言ってんだ?」
独り言のつもりだったのに、乱馬は目ざとく聞き返してきた。
半ば愚痴るように言葉を続ける。
「だって、あたしはちゃんと年をとってるもの。でも、あたしが老衰にかかって死んじゃっても、あんたはずうっと生き延びそうだわ」
乱馬はじいっとあたしを見ていた。
まっすぐすぎるその視線になんとなく居心地が悪くなって、あたしは彼から目を逸らした。
「…それは困るな」
ぼそりと乱馬が呟く。あたしはまた、鏡越しに乱馬を見つめた。
「お前に先に死なれたら、俺が困る」
「はあ?…なによ、それ」
突拍子もない言葉にあたしは思わず苦笑しながら、鏡台の三面鏡を閉じた。
乱馬は至って真面目に言葉を接ぐ。
「知ってるか?女のほうが強いんだってよ。男は、女に先に死なれたら、耐えらんなくなるらしいぜ」
呆気に取られて振り返った。
乱馬がベッドに胡座をかいて、いつになく真剣な目で見ていた。
「─…俺もあかねが先にいなくなったら、おかしくなっちまうかもな」
「…乱馬」
乱馬はばつが悪そうに頬をかいた。
あたしはなんだかおかしくなって、ぷっと吹き出してしまった。
「なんだよ、笑うなよな」
「だって、あんたらしくないんだもん」
あはははは、とあたしは声に出して笑った。
「安心しなさいよ。そう簡単にあんたを置いていくはずないじゃない」
乱馬は一瞬呆気に取られながらも、そうか、と呟いて安堵したように破顔した。
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