ranma 1/2

□parhelion
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不思議な世界だと思った。

見上げる空の位置がこんなにも、果てしなく高い。

けれど、なぜあの灰色の空間が空だと言うことを知っているのかも、わからない。

自分が世界というところに属していると知っていることも、不思議でたまらない。



水溜まりに姿を映してみると、あたしの身体は真っ白だった。

白いふわふわとした尻尾が意図もせずに揺れていた。

琥珀色の自分の目をじっと見詰め続ける。

ぽたぽた、と水面に雫がたくさん落ちて、波紋が広がるのを見ていると、心の中にひとつの言葉が落とされた。



──乱馬。

還りたい。

あのひとのところへ。



心の中の水面に静かに波紋が広がっていく。

還りたい。

還りたい。

逢いたい。



逢いに行かなければならないひとがいる。

還らなければならない場所がある。

何の記憶もないのに、そんな思いが突如として沸き起こって、空っぽのはずの心を急き立てた。



身体が勝手に動いて、自分でも行き先のわからない場所へと脚が歩み始める。

灰色の空を見上げながら、何の記憶ももたないはずなのに突然、胸を抉られるような懐かしい痛みに見舞われた。



あの空にあたしが居たような気がした。

あの空から何かを見下ろしていたような気がした。

それこそ胸を抉られるような何かを。



──まだ泣いてる。

空が泣いてる。

あたしが泣いてる。

あのひとが泣いてる。



足元の水溜まりたちだけが、音のない世界で泣き声を上げていた。







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