liar game

□甲冑を脱いだ騎士
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「好きになった」


 それはまるでにわか雨に降られた時のような衝撃で。何の予告も無しの、本当に突然の出来事だった。


「あ…の、秋山さん?」

「好きなんだ」

「…い、いきなりなんですか?」


 好きなんだ。また、秋山の唇が同じ言葉を繰り返して紡いだ。まるで幼子のように、ひとつのフレーズを頑なに言い続ける秋山。

 直は足に根が生えたようにその場に竦んだ。動くことすらままならなかった。あまりの衝撃に。

 一体、彼は、何を?真っ直ぐに見詰めてくる瞳には、何処か彼には似つかわしくない、必死の色を窶していて。


「君は?」

「え…?」

「君は、俺のことをどう思ってるの?」

「ど、どうって……」


 直は視線を泳がせる。彼のことを『特別』に思っているのは確かなのだ。けれど、無垢な彼女はその思いの名を知らない。それを形容する術を持たない。


「…ごめん、変なこと聞いた」


 秋山が唐突に、ぼそりと呟く。その瞳に未だ燻る切望の情念を無理矢理捩伏せて、彼は直から視線を逸らした。





「君にはこのゲームで敗退してもらうよ」





 瞬間、直の思考機能のいっさいが停止した。彼が今しがた発した、信じられない言葉の意味を、信じられない遅さで咀嚼する。

 何と言った?今、彼は、一体何を……


「な、なに言ってるんですか?冗談きついですよ、秋山さ…」

「冗談なんかじゃ無い」


 重ねるように、秋山の言葉が心持ち強い口調で発せられた。直は思わず一歩後ずさった。震える足を叱咤しながら。



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