liar game

□先手必勝、ならば
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 あの熾烈な戦いは遂に終わった。秋山と直は見事ライアーゲームの勝者となり、本懐だった「事務局を潰すこと」を達成したのだ。

 負債は全て帳消しになり、余した賞金は他者の救済へと充てた。

 そうして二人は無事平穏な日々を取り戻すことができたのだった。







 

 最後に別れた時から一週間、直は秋山と連絡を取らずにいた。何度も携帯を開いてその番号を押すのだが、すんでのところでいつも発信ボタンを押せずにいた。

 ライアーゲームが終焉を迎えた今、秋山と直をつなぐものは果たして在るのか。秋山にこうして連絡を取ることは、彼の迷惑にはならないか。

 当て所ない考えが堂々巡りのままに、気が付けば一週間もの時が経っていた。拒絶されるのが怖くて、待つばかり。けれど待てども秋山から直に連絡を寄越すことは、ない。

 
「…私、秋山さんのこと…」


 ずっと憧れていた。それは本当に純粋に憧憬や尊敬から来るもので、それ以上のものになろうとはよもや彼女自身にも知りえぬことだったのだ。

 こうしてつながりを断ち切られ、姿を見ることもできず声すら聴くことのできない日常生活に戻ってしまうと、漸く自分の混じり気のない本心と向き合うことができた。

 
「…いつの間にか…好き、になってたんだ…」


 傍にいるとそれが当たり前になってしまって、そんな状況に甘んじてしまう。もっと自分の気持ちに素直になるべきだったのに。伝えたいことはまだあったのに。

 けれど先走るわけにはいかない。何よりも秋山の気持ちが知りたかった。そして尊重したかった。自分の気持ちを例え抑え込まなくてはならなくなったとしても。


「…会わなくちゃ」


 うじうじと篭って堂々巡りを繰り返してばかりでは何も変わらない。まだ連絡が取れるうちに、後悔のないように行動しよう。

 直はベッドから降りて大きく背伸びすると、頬を数回叩いてから携帯を手に取った。






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