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□磔の蝶
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ギイィ…と重い音を立てて開かれた扉に目を向けて、あかねはさっと顔を強張らせた。
口の端を吊り上げながら、その男は…乱馬は、ひたひたと窓に寄りかかっていたあかねに近づいてゆく。
「…なんだ。また外の空気でも吸いたくなったのか?」
「…っ、」
「行きたいなら行けよ。…俺が迎えに行ってやるから」
くくっ、と喉の奥で嗤いながら、乱馬は開け放たれた扉を指差した。生暖かい風が暗い部屋の中に押し入ってくる。
あかねはぎくりと身を強張らせながら、首を横に振った。…出来るわけがない。数か月前にここから逃げ出した時、本当に酷い目に合ったのだから。
「い、かない…」
「そうか、遠慮しなくてもいいんだぞ?」
「遠慮なんて…して、ません」
乱馬は満足げに目を細めると、開け放たれた扉を閉めた。その音にすら、あかねは過敏に反応する。
「今日はいいものを持ってきてやったぞ」
乱馬はそう言うと、二十センチ四方ほどの厚みのある黒い箱をあかねのベッドに放り投げた。
黒い箱が柔らかい白いシーツに沈んでゆくのを、あかねは困惑の眼差しで見取る。
「…何してんだよ。早く開けろ」
「は、はい…」
微かに苛立ちの混じった彼の口調に思い切り肩を竦ませながら、あかねはベッドに近づいてその箱に手を伸ばした。
箱にあかねの手が触れた、そのとき。
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