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□昼下がり
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 油屋休業日のその日、千尋は恋人のハクの部屋に着ていた。

 どちらかといえばインドア派なハク(ただ単に千尋のイメージなのだが)のために、今日はのんびりお喋りでもして過ごそうと思ったのだ。

 昼下がりの心地よい日の光が、窓から千尋とハクの座る畳へと差し込んでくる。

 先程から急に話題が途切れてしまい、千尋はちらりと自分を背後から抱きしめるハクの顔を見上げた。

 …なんか物凄く良い雰囲気じゃない?これ!

 かっと千尋の頬が熱くなる。沈黙がかえって心地よい。背に感じるハクの温もりが擽ったい。

 …よぉし、ここはわたしがハクをリードしてあげなくちゃ!

 奥手な彼のために、と千尋は心のなかで決心し、話題を切り出す。


 「ねえ、ハク?」

 「ん?」

 「ハクは、き、き、キスって好き?」


 …きゃっ、言っちゃった!

 ひとり赤面する千尋。

 しかしその一方で、ハクは微妙に首を傾げていたのだった。

 …きす?魚の鱚のことか?この状況で何故、千尋はそんな話題を…

 恥じらう千尋と面食らうハク様は、まだ知らない。

 ふたりの間に重大な誤解があることを……。





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