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□星屑
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 大学生になったふたりはようやく晴れて恋人になり、まさに「結婚」への順調なプロセスを辿っていた。

 しかしひと月前、そんな幸せな日々はある人物の訪問で突如として皹(ひび)を入れられてしまったのだ。



 唐突に物凄いリムジンで天道家を訪れたのは、とある大企業の社長息子・吉宮悠斗なる青年。

 乱馬と引けをとらず端正な面立ちの悠斗は、黒のスーツを着こなし、鋭く冷たい目で早雲を見据え、ただ一言言った。


 「私はあかねさんを見初めました。あかねさんと結婚させてください。…ちなみにあなた方に拒否権はありません」


 …拒否すれば、この道場を潰す。徹底的な制裁を与える。

 その鷹が獲物を捕らえるような鋭い目は、そう物語っていた。お前達に拒否などさせはしない、皆路頭に迷わせることなどたやすいのだ、と。

 全員が蒼白になり硬直するなか、悠斗はあかねに目線を移して問い質した。


 「あなたはどうですか、あかねさん。私の妻となり、次期社長夫人として私を献身的に支えて下さりますか。…それとも、」


 くすり、と目を細めて冷笑を浮かべた悠斗に、あかねの頭のなかで危険信号が光った。

 この男は本気だ、危険だ、と彼女の本能が告げていた。下手をしたら本当に家族も、そして愛する乱馬もただでは済まされない、と。


 「…はい。…わかりました」


 乱馬、乱馬。

 その場にいなかった乱馬を想い、あかねは心のなかで涙した。

 全ては家族を、そして誰よりも愛する彼を守るために。


 「…あなたの妻に、なります」

 …ごめんね、乱馬。

 そしてその一部始終を聞かされてから今日までのひと月、乱馬はあかねの顔すらろくに見てはくれなかったのだった。





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