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□星屑
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「あかね。ちょっと散歩にでも行こうぜ」
夕飯の後にどこか神妙な表情でそう言ってあかねを誘い出した乱馬に、あかねは静かに頷いた。
黙って居間を出る乱馬の背に着いて行く。
「真っ暗ね」
「ああ」
「どこまで行くの?」
「…」
乱馬はその問いには答えずに、仄暗い街灯の明かりだけをたよりにひたひたと住宅街の道を歩く。
あかねもそれ以上は口を閉じて何も言わずに、ただ乱馬の背を追いながら歩きつづけた。
乱馬の影が細く長く、あかねの足元に向かって伸びている。何故か意識してそれを踏まないように、あかねは少し右側にずれた。
斜め後方から見える乱馬の顔には、街灯の明かりがさしてより彼の表情を神妙にして見せた。
憂い、悩み、そんなものがその端正な顔には浮かんでいた。薄暗い明かりは陰りを窶した表情をどこか魅力的に見せる。
(…どこか陰のある男の人はかっこいい、っていうけど。まさか乱馬にそう思えるなんてね)
あかねは心のなかでそっと溜息をつく。そんな彼の魅力に見とれた訳ではないのだ。決して。
むしろ、そんな陰を纏った彼を垣間見たのが切なかった。哀しかった。何故なら彼女はよく知っていたからだ。
乱馬がそうなったのは自分のせいだ、と。
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