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□砂
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 ざざ・・・・ん

 
 打ち寄せてはあるべき場所へと還ってゆく波の音。

 その潮の香り。

 冷たい凍れる海に手を浸した感触。

 しおからいその味。

 青い青い、大海と大空の色。

 あの日確かに、わたしのこの五感全てに、あの瞬間を刻み込んだはずなのに。

 時は残酷にも、すべてを奪い去ってゆく。




 あの海岸で、掬ってはこの指の間から零れ落ちた、さらさらとした砂のように。




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