街角にある小さなカフェ。
そのなかでは今、ちょっとした囁き声がぽそぽそとあちこちで聞こえていた。
「…ねえ、あの人超かっこよくない?」
「さっきから三十分くらいああしてるのよ」
「誰かのことを待ってるんじゃないかしら?」
「うらやましい〜!!」
まさか自分がそのカフェの中で注目を集めていることなど露知らずに、珈琲を啜っているのは、息をのむほどの白皙の美青年・ハクである。
何やら難しそうな理系の本を手に珈琲のカップに口をつけ、時折窓の外を見てはふうっと溜息をつく様子は、カフェ内の女子たちの感嘆をこの上なく誘っていることを、彼は知らない。
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