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□スコア
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「ねえねえ、千尋」
自習の時間、千尋がペンをくるくると指で回しながらぼーっとしていると、前の席の親友・早紀が椅子を倒して千尋の机に頬杖をついた。
「つまんないね、自習。こんなプリントやんなくてもよくない?」
早紀は顔を顰めると、藁半紙のプリントを裏返して千尋の机に置く。
千尋は小さく欠伸をして、ちらりと前方の席を見遣った。
周りが騒がしい中、ひとり真面目に机向かうその背中。
「なになに、まーた彼氏のこと見てたの?」
早紀がペンの先で千尋のおでこを突きながらからからと笑った。
千尋は赤面してそのペンを指で弾き飛ばす。
「まったく、ほんとにラブラブだねえ〜あんたたちは」
「そ、そんなつもりじゃあ…」
モゴモゴと千尋は口篭もる。どうしても彼の絡む話題は気恥ずかしくてついていけない。
「あ、じゃあ面白いことしようよ!」
早紀は何か閃いたようにぽんっと手を打って、裏返しにされた藁半紙にシャープペンシルの先を置いた。
「え、なになに?」
「いいから、千尋はちょっと向こう向いてて〜」
仕方なしに、千尋は頬杖を突きながらプリントから目を逸らす。
視界に無意識のうちに収まるのは、彼の背。
千尋の恋人・速水ハクだった。
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